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費用は自前 それでも認知症カフェを続けるワケ

2018年12月20日 15:00

 みどりや薬局 清水雅之

 みなさま、こんにちは。みどりや薬局の清水です。 098599.png

 

 私どもみどりや薬局は、島田市唯一の健康サポート薬局として、また地域で営む薬局としてさまざまな活動を求められています。これまでに紹介してきたアンチドーピング活動や学校薬剤師をはじめ、薬剤師会活動を含めると災害医療、認知症対策、地域包括ケア、地域住民向け健康講座など、多岐にわたります。

 その中でも特に力を入れて取り組んでいるのが「災害医療」と「認知症対策」です。今回は、私たちが島田市で初めてスタートした認知症カフェを紹介します。1ヵ月に1回のペースで行っており、今月(2018年12月)の開催で21回目を迎えることになりました。

今回ご紹介すること・・・

  • ・介護支援が必要な方、社会参加が必要な方への架け橋として
  • ・毎回用意する20席をあふれるほどの参加者が
  • ・多職種が運営に関わり、その後の連携につなげる
  • ・参加者全員が楽しめる場であることが最も重要
  • ・地域活動における費用負担をどう考えるか
  • ・社会資本としての薬局の役割

オレンジカフェアロマ虫よけづくり.png島田オレンジカフェでアロマ虫よけ作り

098599.png介護支援が必要な方、社会参加が必要な方への架け橋として

 私たちの薬局にはさまざまな方が相談に訪れます。多くは自らの疾患や内服薬、健康食品に関するものですが、ここ数年は認知症や高齢者介護に関する相談が増えています。通院中の方やケアマネジャーがついている方に関しては、病院や介護施設と情報共有して多職種連携に結び付ければ解決に向かうことが多いです。一方で問題となるのは、認知機能の低下が見受けられたり、介護に問題を抱えているにも関わらず、医療、介護のサポートを受けていない方々が地域には多く存在するということです。

 それならば私たち薬局がなんらかのサポートができないかと思い、2017年4月にスタートしたのが、島田市初の認知症カフェ「島田オレンジカフェ」でした。開催場所は、薬局のすぐ近くに建設した「みどりや健康ステーション」という健康イベントスペースです。

 あえて薬局ではない場所で実施しているのには、スペース確保の問題以外にも理由があります。

薬局以外の場所で島田オレンジカフェを実施する3つの主な理由

  • 1.薬局などの医療機関へ行くのに抵抗がある、認知症疑いの方にこそ参加してほしい
  • 2.普段薬局には来ているが、より社会的な場所への参加が必要そうな方を薬局の外の地域活動へ誘導したい
  • 3.認知症の方や介護をする人に、いつもと違う特別な時間を楽しんでもらいたい

 島田オレンジカフェを始める前も、認知症の疑いがある方のご家族から薬局で相談を受けていました。状況の聞き取りをし、場合によってはMCI判定などをして近隣クリニックへの紹介を行っていましたが、ご家族の思いとは裏腹に、医療機関への相談自体を拒否される方もいるのです

 また、投薬などの医療的な支援に加え、社会参加こそが健康増進につながるのではないかと思えるような患者さんも多く存在することに気がつくようになりました。

 こうした課題を解決する一案として、医療介護支援が必要な方、社会参加が必要な方、どちらもアクセスしやすい場所があればよいと考えたのです。

098599.png毎回用意する20席をあふれるほどの参加者が

 島田オレンジカフェは、薬局のスタッフ(家族)を中心に、近隣住民や地域包括支援センターの方、医療介護関係者のボランティアの方々で運営しています。

 毎月第2か第3土曜日の薬局終了後の14時半~16時半まで、2時間程度を目安に開催しています。ありがたいことに開催日の13時ごろには利用者の方が来られます。スタッフを除いて20席程度を用意していますが、毎回、席を追加するほどの方がいらっしゃいます。

 途中参加、途中退出自由のスタイルをとっており、前半の1時間くらいは利用者とスタッフがお茶を飲みながら談話をしたり、専門家に相談をする時間に充てています。後半の1時間では、音楽セラピーやアロマ虫よけスプレーづくりなどの企画を行うことが多いです。

島田オレンジカフェ.jpg認知症サポーター養成講座を開催
受講者は普段カフェに来てくれている近隣住民、認知症患者
および家族、民生委員、薬剤師や介護士です。
認知症サポーターとは、認知症について理解し、
必要に応じて認知症患者およびそのご家族を理解者としてサポートする人のこと。
講座では認知症に関する基本的な知識とともに
接し方や適切な対応方法、社会的サポートなどについて学びます。

098599.png多職種が運営に関わり、その後の連携につなげる

 参加者からの相談はさまざまです。医療に関するものは主に私たち薬剤師が受け、介護や助成に関するものは包括支援センターや介護関係者、行政関係者が担当します。相談コーナーはオープンなカフェスペースと、プライバシーに配慮しながらじっくり話せる畳のスペースの2種類を用意しています。

 多職種が関わることで、サポートが必要な方を適切な職種につなげやすくなります。同時に、普段薬局や医療機関に来られない方に対しては、薬局や薬剤師の役割をお伝えして関係を構築し、受診に結びつけることにも成功しています。

お茶アイコン.png 参加者全員が楽しめる場であることが最も重要

 私たち運営者がカフェの役割として一番重視しているのは、参加者と地域や医療、介護を繋ぐ場としての役割とは別にあります。それは、運営者を含めた参加者が、楽しみ、リフレッシュできる場にすることです。そのため、開催時には「笑いヨガ」「音楽セラピー」「フィットネスダンス」などを企画し、講師を呼んで実施しています。

島田オレンジカフェ運動教室.jpg オレンジカフェ運動教室
島田市がすすめている健康体操「しまトレ」を30分程度実施。
自体重を利用した筋肉トレーニングと、柔軟を主体とした健康体操を
島田市歌に合わせて行います。
参加者の様子をみながら、
その方に合った強度でのトレーニングをするよう
アドバイスしています。
島田オレンジカフェ笑いヨガ.JPG笑いヨガをする参加者
笑いの体操とヨガの呼吸法を合わせて行うので
酸素を多く取り入れることができ、
精神的、身体的な健康促進効果が生まれる。
日常生活ではあまり大きな声を出すことがないためか、
皆さん、とてもスッキリした笑顔になります。

お茶アイコン.png地域活動における費用負担をどう考えるか

 薬剤師が地域活動を行う上で考慮しなければならないのが、時間的、経済的な負担です。

 薬局や薬剤師が行う地域活動については、自前になることが多いかと思います。薬剤師会や行政が主催する地域活動については日当が支払われることがありますが、それも負担に見合うものとは思えません。

 薬局の運営経営方式や個々の薬剤師によってさまざまなケースや考え方があると思うので、ここでは地域活動を行うに当たっての私のスタンスをお話しします。

 まず、私たちが地域で薬局を営む上で大前提としていることがあります。それは、私たちが地元で薬局業を営む生活者であるということです。薬局は、保険医療機関として機能するだけでなく、地域の公共を担い、収益を地域社会へ還元することが重要だと考えています。

 そのため、例えば島田オレンジカフェについては、参加者から参加費をいただかず、募金箱を設置しています。提供する茶菓子代は募金から充てていますが、その他の運営費用は薬局の負担となっています。

 こういった話をさせていただくと、慈善事業とみられることがあるのですが、私の考えは少し違います。

お茶アイコン.png社会資本としての薬局の役割

 あくまで私見ですが、地域医療は、医療機関と地域住民との信頼関係や協調関係によって維持されています。信頼関係の基盤がないと、地域の医療が衰え、結果的に薬局をはじめとする医療機関が維持できなくなります。一方で、健康サポート薬局は、地域の基盤を強固にする任も負っています。そのための地域活動ですから、単純な慈善ではなく自分たちの薬局や地域の医療を守る取り組みだとも考えられます。

 一見、無報酬に見える活動であっても、薬局によるサービスは無形の社会資本として蓄積されます。その継続によって、薬局の存在そのものが地域を活性化し、結果的に私たちの報酬につながっていくのではないでしょうか。

 薬局は地域のコミュニティを維持するインフラの1つです。その役割を果たさずに目の前の調剤をこなすだけでは、処方箋枚数が減ったときにはどうなるのか。地域から別の役割を求められることもなく、ひっそりと姿を消すことになるでしょう。残念ながら、私の地域でもそういったかたちで閉局する薬局が出てきています。

 私もまだまだ薬局薬剤師としての経験が豊富なわけではありませんし、活動のほとんどが手探り状態です。これからもいろいろな薬剤師の活動や考え方を勉強させてもらい、地域に求められる薬局作りのために奔走します! 

オレンジカフェ赤ちゃんとsmall.jpg赤ちゃんを抱いて笑顔を見せる参加者

【コラムコンセプト】

みどりや薬局はごくごく普通の家族経営の薬局。周りの薬局とちょっと違うのが、健康サポートに力を入れていること。特に最近はスポーツファーマシストとしての活動からの健康サポートに励んでいます。数多くの失敗を経験しながら、スポーツファーマシストとしての地域への貢献を試行錯誤する奔走記!

【清水雅之氏プロフィール】みどりや薬局様2枚目.jpg

1984年生まれ。お茶と大井川とSLのまち島田市で、家族経営の薬局みどりや薬局を営む。生まれ育った島田市を健康サポート薬局として支えるため、日々奮闘中。少年時代に出場したレスリングの全国大会に多くのオリンピアンがいることを知り、アスリート支援に興味をもちJADA公認スポーツファーマシストを取得。スポーツファーマシストとして活動する中、発明&実験好きの血が暴走してしまい、うっかりドーピング防止カードゲーム「ドーピングガーディアン」を開発。スポーツファーマシストや薬剤師の新たな可能性を模索しています。

みどりや薬局
 https://www.facebook.com/midoriya.m2020/

ドーピングガーディアン
 https://www.doping-guardian.com/

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