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SNSで医療情報を発信する人たちは、情報の力と影響をとても大切にしていた

『SNSが作る新たな医療のカタチ〜新世代のインタラクティブセミナー』参加体験記

2018年12月21日 10:30

 お久しぶりです!昨年、コラム「薬剤師みやQのハッピーな職場って?」を連載していたみやQです。最近、急に寒くなりましたね。

 2018年12月13日に大阪で開催された『SNSが作る新たな医療のカタチ〜新世代のインタラクティブセミナー』に参加してきました。熱い現場の状況を報告します。

◎この記事でお伝えしたいこと

  • SNSやWEB上には根拠に乏しい健康・医療情報があふれている
  • 医師と患者の間にある敷居をなくしたい!インタラクティブセミナーを開催
  • 主催者も予想外の参加者数!多くの人が根拠のある情報を発信・拡散することで救える人がいる
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そもそも、どんな経緯で集まったの?

 今やSNSやWEBは多くの国民が情報を得る場として活用しています。しかし、根拠に乏しいばかりか、健康を害する恐れのあることまで「健康にいい」と情報提供されるのが現状です。

 一方、SNSや自身のWEBサイト、ブログ、メディアなどを通じて、できるだけ信憑性の高い健康・医療情報を提供している医療者もいます。小児のアレルギーを専門とする小児科医のほむほむさんは「小児アレルギー科医の備忘録」、皮膚科医であり創薬研究者の大塚篤司さんは「大塚篤司OFFICIAL PAGE」、消化器外科医のけいゆうさんは「外科医の視点」と、それぞれご自身のサイトやさまざまなメディアを通じて情報発信をされています。

 今回のセミナーは、twitter上で交流のあるこの3名の医師が「一般の方と身近に接する機会をつくりたい」と意気投合し、開催に至ったそうです。

 主催者であり、今回登壇したのは以下の3名の医師です(登壇順)。

 けいゆうさん(@keiyou30)...消化器外科医

 おーつかさん(@otsukaman)...皮膚科医兼創薬研究者

 ほむほむさん(@ped_allergy)...アレルギー専門小児科医

 主催者は「やりたくてやっている(参加費無料、会場費も主催者の持ち出し...)」、そして参加者は「聞きたくて集まっている」。「インタラクティブセミナー」と題したのには、ありきたりな市民公開講座ではなく、楽しい交流の場にしたいとの願いが込められています。「医師と患者の間にある敷居をなくしたい、どんどん質問してほしい」とのことでした。

3名の医師が語る、医療情報、そして情報を受ける側への思い

 最初の登壇者はけいゆうさんです。かぜをひいたとき、すり傷ができたときの対処法について解説しました(本当はもっと伝えたい情報を準備されていたようなのですが、熱いトークとなった結果、スライド2枚でタイムオーバー)。

 かぜをひいたときの対処法としては「おでこを冷やす必要はない」「うがい薬でのうがいは不要」「かぜに抗生物質は効かない」「かぜ薬でかぜは治らない」など。また、すり傷は「消毒してはいけない、水道水で洗う」「乾燥させてはいけない」といった、医療者には常識でも、一般の人には意外と知られていない事柄を紹介しました。けいゆうさん曰く「たくさんの人がかかるcommon diseaseについて、どのような対処法が適切かを発信したい」とのことでした。

 おーつかさんは、創薬についてのお話。ツカミで「B'z」の正しいアクセントを解説して会場の空気をさらに温めた後、薬ができるまでの困難な道のりを分かりやすく説明していました。数多くの候補物質から実際に薬となるのはごくわずか。Phase Ⅰ〜Ⅲの治験のプロセスは医療者であれば常識ですが、一般の人にはほとんど知られていないことなので、こうした機会があれば理解が深まるのではないかと感じました。

 また、自身の専門である悪性黒色腫とほくろの鑑別方法(ABCDルール)についても解説。気をつけるべきサイズについて、ストローや鉛筆の直径よりも大きい場合は皮膚科医に相談するとよいとのことでした。さらに現在、おーつかさんはアトピー性皮膚炎治療薬の開発を進めているとのことです。

 そして最後に、若くして亡くなった友人医師に触れました(詳細はAERA dot.の連載記事をご参照ください)。医師としての生き方を記したクレドは、今も財布の中に入れて持ち歩いているそうです。「患者さんにとって、少しでも、今よりもよくする。研究という形ではなくても、健康に関する適切な知識を広めることで助かる人がたくさんいると思う」と語りかけました。

 ほむほむさんは、ネット上でも展開されている小児の食物アレルギーやアトピー性皮膚炎についての話題を紹介しました。初めに、アトピー性皮膚炎に関する書籍の売り上げランキングを紹介、オススメできない本が数多く並んでいることを示しました。患者がネット上で根拠のしっかりしたアトピー性皮膚炎の情報を探すのが非常に困難である現状が、改めて浮き彫りになりました。

 アトピー性皮膚炎の成因について一般の人に説明する際、「免疫」や「寛容」という言葉をどう分かりやすく言い表せばよいか迷うことがあるのでは。ほむほむさんは「免疫=からだから排除する力」「寛容=からだが受け入れること」、そしてアレルギーとは「行きすぎた免疫反応が働くこと」と言い表していました。そして、血液検査ではIgE抗体の数は分かるものの、IgE抗体価が高いからといってアレルギー症状が出るとは限らないといったことや、ごく少量から摂取する「経口免疫療法」について、根拠のあるデータを示しながら解説しました。

 ディスカッションでは、ご自身のサイト「ぱぱしょー.Com」で一般の方に向けた育児情報を発信している小児科医のぱぱしょーさんが登場!参加者のサプライズをさらいました。

 みなさん、SNSが持つ力や医療情報が一般の方にどのように影響を与えるのか、深く、慎重に考えていらっしゃる方ばかりでした。ディスカッションでは、次のような発言が印象的でした。

- 情報発信で怖いのは、情報が切り貼りされて拡散されること。発信者の意図と異なる見解が拡散されるのが怖い

-「正しい」医療情報という表現に引っかかりを感じた。自分の考えとは異なる考えの人にも、その人の考える「正しさ」がある。「根拠のある」医学情報と表現するようにしている

- 病名で検索をすれば根拠のある情報を得やすい。しかし、症状や状態で検索すると、まだまだ正確な医療情報にはたどり着くのが困難

- 「信憑性の高い」医療情報に近づくには、規模の大きな病院、よく知られている学会、公的機関のサイトを見るのがオススメ

- インターネット上の医療情報をより根拠のあるものにするには、多くの人が根拠のある情報を発信・拡散することが大事

会場は熱く、そして温かかった

 大阪駅からほど近くの会場。もともとは40人ほどの参加を見込んでいたようなのですが、開始前にはすでに立ち見が出る盛況ぶりで、会場に入りきれないほどの人々が集まりました。おそらく、70人を越えていたのでは...座席をできるだけ寄せて、できるだけ多くの人に会場内に入ってもらうことに。

 ほむほむさんが小児のアレルギーを専門とされていることもあり、小さいお子さんを持つ方が多かったです。お子さんを連れて参加された方もいて、自然とファミリーシートのような場所が会場内にできていました。お子さまたちは、最初はご機嫌だったのですが、やはり1時間半も過ぎると飽きてきてぐずる場面もありました。しかし、この会場に集まったみなさんは全く気にもとめずセミナーに集中していました。そもそも、より確かな医療情報を知りたいと参加した人、情報リテラシーの高い人たちばかり。最も確かな情報を欲している小さい子を持つ親御さんを邪険に扱う理由がありません。

 今回のセミナーの模様は、twitter上で複数の参加者が発信しています。「#SNS医療のカタチ」を検索してみてください。今後も同様のセミナーを開催する予定とのことですので、お近くで開催されることがあれば参加してはいかがでしょう?

 セミナーを足を運ぶことだけが参加ではありません。真っ当な情報だと思ったものは拡散するなど、方法はいろいろあります。

「根拠のある医療情報を一般の人に届ける」ー 薬剤師である読者のみなさんも共に取り組んでいきませんか?

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