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薬剤師ならいつかは経験する 常連さんとの悲しい別れ

2019年01月21日 20:14

薬剤師ならいつかは経験する 常連さんとの悲しい別れ

つぼみ薬局居宅介護支援事業所(広島市安佐南区) 
角山 美穂

 在宅患者さんのお役に立ちたくて、在宅専門薬局を立ち上げたのが2009年11月。1人薬剤師 兼 ケアマネとして、24時間体制で頑張っています!

【PharmaTribune2014年3月号掲載】

悲しい別れ

 年齢は私よりちょうど10歳上、59歳の女性(Aさん)。開局から半年ほどたった頃、「家の近くに薬局ができて何でも相談できて助かるわ〜」と来られて以来、毎日の散歩の途中で必ず立ち寄っておられた方でした。

 身長が150㎝で、体重120kgのヘビースモーカー。 高血圧症に糖尿病、貨幣状湿疹が完治せず...と挙げればきりがないほど、不健康な身体の持ち主。当初はつぼみが暇だったこともあり、禁煙指導や食事指導(ノートに食べた物を全て記入して持参するよう指導)を行いました。一時は体重が2ケタ台になり、一緒に喜んだこともありました。

 ある年、クリスマスを過ぎた日のお昼前。病院でのリハビリ帰りに「用はないけど」と、いつも通りの来局をされ15分程愚痴をこぼして帰られました。

 そして、その日の17時前。救急車が薬局前に止まったのが見えました。救急隊の方が慌ただしくされています。私は、居宅療養管理指導に行った後の医師への報告書を書きながら、事務の方と「知っている方でなかったらいいね...…」と雑談していました。

 翌朝、向かいの喫茶店の方が走って来られ、「ねえ知っとる?」と、Aさんの死去を知らせてくれました。喫茶店の方は、前回紹介した「情報共有ネットワーク」の貴重な構成員(関連記事)。これまでも、「Aさんがモーニングを食べに来てね、『つぼみさんに叱られるから野菜を多めにして』と言われたわ」「Aさんが食後に煙草を吸っているわよ」と、気付いたことや気がかりなことを情報提供していただき、服薬指導の参考にしていました。

 Aさんは、ご近所の方が誰も寄られなかった開局当初から気さくに来局され、体調のことや家族のこと、薬のことなどを話してくださった方。『用がなくてもつぼみ薬局におしゃべりに来る方 第1号』だっただけに、ショックは大きかったです。

 ひとり娘さんが離婚して帰ってきて、2歳になったばかりのお孫さんの世話が大変との愚痴に「でも可愛いでしょ、お幸せですよ」と話したのは亡くなる半年前。その数カ月後は、体調不良の訴えに「初心にかえってダイエット!!!一緒に頑張りましょ」とも話していました。最近は忙しくて、暇だった開局当初ほどには彼女のお話を聞けていなかったな...…。

 彼女が安置されているお寺に喫茶店の方とお別れに行きました。いつも通り「また来るわ」と、帰り際に交わした視線が最後だったとは...…。「こんにちは」と、毎日のように薬局に入って来られた感覚が残っています。

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 年が明け、がん末期の患者さんや、娘さんに乳がんが見つかり落ち込んでいる患者さん、一方で死が他人事だなと感じられる患者様へは、あえて匿名で彼女のことをお話しています。

 私自身が今回の出来事で思い知らされたことですが、生きている限りいつかは必ず訪れる死。死ぬことは当たり前だということ。「何歳まで生きたら幸せ」なのではなく、命ある限りどのように生きるか......。だんだんと話す内容が宗教家のようになっていて、つぼみ教の教祖とどなたかに言われたこともありますが(笑)。

 「常連さん2号」「常連さん3号」...…。忙しい日にはなかなか厄介ですが、できるだけのことをやって行こう、肩の力を抜いていこうと思うようにしています。

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