新規登録

禁煙補助薬~ガムとパッチ、どちらがイイですか?- 前編

医療法人社団徳仁会中野病院 青島周一

2019年01月31日 10:00

患者さんに自信を持ってOTCをおすすめしたい!論文情報や患者さん対応など、薬剤師による薬剤師のためのOTC解説です。

薬の無料アイコン9.png今回のお話「どの禁煙補助薬を選べばいい?」

  • 喫煙と禁煙が健康にもたらす影響
  • 市販の禁煙補助薬
  • ニコチン置換療法による禁煙の成功割合
  • 長期的な有効性はどうなの?
  • ニコチン置換療法の有害事象リスク
  • 妊娠中のニコチン製剤
  • 一気にやめるか、徐々に本数を減らすか
  • 結局のところどうするか

薬の無料アイコン9.png今回出てくるOTCは・・・

シガノンCQ1透明パッチ(大正製薬株式会社)、シガノンCQ2透明パッチ(大正製薬株式会社)、ニコチネルパッチ10(グラクソ・スミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・ジャパン株式会社)、ニコチネルパッチ20(グラクソ・スミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・ジャパン株式会社)、ニコチネル(グラクソ・スミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・ジャパン株式会社)、ニコレット(ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社)


 レジ下の第1類医薬品が並んだガラスケースを覗き込みながら在庫を確認していた薬剤師のあなた。ガラス越しから、40歳代とおぼしき男性客がやってくるのが見えました。

 「あのぉ、実は、そろそろ禁煙したいな、と思っているんです。自分もいい年ですし。家族からもやめた方がいいって言われて。それで病院に行こうかとも思ったんですけど、昼間はなかなか時間が取れないんですよ。ドラッグストアでも禁煙のための薬が買えると聞きました。ガムと貼るタイプがあるようですけど……どっちがイイですか?」

 なるほど、なるほど、確かに禁煙補助薬ありますねぇ。なんなら目の前にパッチ製剤あります。しかし、あなたはふと自分の過去が頭をよぎりました。パッチ製剤を貼付しながら、ついついたばこに火をつけてしまった若かりしころの自分を。そして数年前、禁煙に成功したのは結局のところ、禁煙補助薬の力ではなく、ただただ『気合』だったことを……。

薬の無料アイコン9 (1).png喫煙と禁煙が健康にもたらす影響

 喫煙が健康に及ぼす影響は非常に大きく1) 【表1】、非喫煙者と比較して約10年、平均余命が短くなると考えられます2,3,4)【図1】。

【表1】喫煙が与える健康への影響(男性でのデータ)

禁煙補助薬表1.png
(参考文献1より筆者作成)

 1日当たりの喫煙本数が1本の場合、20本と比較して、男性における冠動脈疾患リスクは約半分に、女性では約3分の1に低下することが示されています5)。1日1本の喫煙であってもリスクは残存すると考えられますが、1日の喫煙本数を減らすことで、冠動脈疾患リスクの低下が期待できます。

 40歳までに禁煙すれば、継続的喫煙に関連する死亡リスクは約90%低下するといわれています3)。そして、60歳以上の高齢者を対象とした7研究のメタ分析6)では、80歳以上を含む、どの年代においても喫煙は早期死亡のリスクファクターであることが示されており、禁煙するに遅いということはありません。

【図1】喫煙者(赤線)および非喫煙者(青線)における35~80歳までの死亡率

22647_fig1.png

(参考文献4より引用)

 禁煙により、1年間で4~5kgほどの体重増加が懸念され7)、短期的には糖尿病の発症リスクが上昇するという報告8)がありますが、それにもかかわらず、心血管疾患の発症リスクや総死亡リスクの低下9, 10)が期待できます。

薬の無料アイコン9 (1).png市販の禁煙補助薬

 禁煙補助治療として、OTC医薬品で対応できるのはニコチン置換療法のみです。ニコチン置換療法とは、たばこに含まれるニコチンの摂取を、喫煙以外の方法で置き換える禁煙補助療法です。たばこを吸わないときのイライラ・集中困難・不安・だるさ・眠気などのニコチン離脱症状を軽減しながら、喫煙習慣の改善を図ることができます。最終的には、ニコチンの摂取量を徐々に減らして、禁煙達成を目指します。

 市販で入手できる薬剤にはニコチンパッチ製剤ニコチンガム製剤の2つがあります。主な薬剤を【表2】にまとめます。ニコチンパッチ製剤は1日1枚、起床時に貼付し、就寝前にはがします。なお、発熱など体温が高い状態ですとニコチンの吸収量が増加することもあり、副作用発現に注意が必要です。また、ニコチンガム製剤は1回1個を30~60分かけて噛みます。1日当たりの使用個数は、開始時では、直前までの喫煙本数に応じて、1日4~12個(最大24個まで)。禁煙になれてきたら、1週間ごとに1日当たり1~2個ずつ減らしていきます【表3】

【表2】主なニコチン製剤

禁煙補助薬表2.png
(著者作成)

【表3】ニコチンガム製剤の用法


禁煙補助薬表3.png(たばこを吸いたいと思ったとき、1回1個をゆっくりと間をおきながら、30~60分間かけてかむ。1日最大24個まで)
(著者作成)

薬の無料アイコン9 (1).pngニコチン置換療法による禁煙の成功割合

 ランダム化比較試験のメタ分析11)によれば、ニコチンパッチ製剤およびニコチンガム製剤は、プラセボもしくは未治療に比べて、禁煙成功率が50~60%高いことが示されています【表4】。医療用医薬品のバレニクリンによる禁煙達成は、プラセボと比較して4倍近くという結果12,13)ですから、それに比べたら、効果は劣ると言えるかもしれません。実際、267 研究(解析対象101,804例)のネットワークメタ分析では、ニコチン置換療法よりもバレニクリンで禁煙達成割合が多いという結果になっています14)【表5】。

【表4】プラセボもしくは未治療と比較したニコチン置換療法の禁煙成功

禁煙補助薬表4_02.png(参考文献11より筆者作成)

【表5】禁煙補助薬の禁煙達成割合(オッズ比[95%CI])

禁煙補助薬表5.png(参考文献14より筆者作成)

 他方で、禁煙治療を希望する18歳以上の患者を対象に、12週間のニコチンパッチ(241例)、12週間のバレニクリン(424例)、12週間のニコチン置換療法の併用(ニコチンパッチ+ニコチン口内錠、421例)の3つの群を比較して、禁煙達成割合を検討した非盲検化試験15)では、3群間に有意な差を認めませんでした。禁煙達成割合は26週時点で、ニコチンパッチ群22.8%、バレニクリン群23.6%、置換療法併用群26.8%、また52週時点でニコチンパッチ群20.8%、バレニクリン群19.1%、置換療法併用群20.2%という結果になっています。

 禁煙補助薬はあくまで『補助薬』であり、禁煙を成功させるには、薬剤の違いによる効果の差、というよりもお客さんの禁煙に対する関心の強さが重要だと思います。また、たとえ禁煙補助療法を受けて禁煙を達成しても、それを長期的に維持できるかという問題もあります。

【図2】に示したのは、バレニクリン、ブプロピオン(本邦未承認)、プラセボの3群を比較して、禁煙達成割合を検討したランダム化比較試験13)の結果です。治療期間12週時点において、プラセボ群と比較してバレニクリン群で禁煙達成割合が高いことが示されています。しかし、その後はバレニクリン群での禁煙達成割合が大きく下降していることが読みとれるかと思います。また興味深いことに、プラセボ群では禁煙達成割合に大きな変化がないことが分かります。

【図2】バレニクリン、ブプロピオン、プラセボによる禁煙補助療法での禁煙達成割合

22647_fig2.png

(参考文献13より著者作成)

薬の無料アイコン9 (1).png長期的な有効性はどうなの?

 将来的な健康への影響、という観点からすれば、禁煙補助薬を使うにせよ、使わないにせよ、やはり長期的に禁煙を維持できるかどうかが肝要です。では、長期間の禁煙を維持するために禁煙補助薬を標準より長めに使ってみればどうでしょうか。

 ニコチンパッチ製剤の標準的な使用期間は8週間ですが、喫煙者525人を対象に、ニコチンパッチ8週間使用、24週間使用、52週間使用の3群を比較して、禁煙達成を検討したランダム化比較試験16)が報告されています。

 研究の結果、8週間の標準使用群と比較して、24週使用群では1.7倍禁煙達成が多い(オッズ比1.70[95%CI 1.03~2.81])ことが示されていますが、52週では統計学的な有意差はありませんでした(オッズ比1.17[95%CI 0.69~1.98])。長く治療すれば、より効果が期待できる、という問題ではなさそうです。

ニコチン置換療法の安全性はどうなの?妊娠中も使っていい?たばこの減らし方は?…気になる安全性や禁煙方法は次のページで解説。

1 2
トップに戻る