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地域のイベントと地縁型コミュニティ、そして医療・介護との関係

田舎の薬剤師 地域医療への貢献を模索中!〜故郷を薬剤師として支えたい〜#9

2019年02月13日 18:00

 私の実家は高浜町で最大の商店街の一角にあります。最盛期には20〜30の店があったのですが、今や数軒のみ。去年、メインのスーパーマーケットが閉店してしまい、数少ない残りの店舗にはどこも後継ぎがいません。先日には長年お世話になった散髪屋の店主が急逝されました。以前は私の実家でも商売をしておりましたが、10年ほど前に移転しております。

 昔から商店街では年に何回かイベントを催しておりました。一番記憶に残っているのが、吉本新喜劇が来て商店街にある公園で新喜劇が行われたことです。石田靖、間寛平、坂田利夫、島木譲二などなどの超豪華メンバーで、町民とコラボし、確か私の祖父も一緒に芝居をしていたように記憶しております。

 現在では年4回、商店街と地区の住民で協力して、季節ごとにイベントを開催しています。春はひなまつり、夏は七夕、秋はハロウィーン、冬は餅つきを題材にしております。私もできるだけ参加するようにしているのですが、勉強会などの個人の予定と重なってしまうことも多いですね。

1910019_pho02.png昨年末の餅つき大会の様子。「人おらんから餅ついてよ!」と言われたのですが、大根おろしを作っている間に餅つきが終わってしまいました 笑

fugu_icon_purple.jpg400年以上続く地域の祭りと祭りを愛する住民たち

 一旦、別の話題へ。

 高浜町の高浜地区では数え年で7年に1度「高浜七年祭」(佐伎治神社式年大祭)が開催されます。400年以上前から続いている祭りであり、ちょうど今年(2019年)の6月23日から29日までの1週間かけて行われます。3基の曳山を中心に、屋台囃子、子供踊り、にわか、太刀振りなどの各種芸能が連日繰り広げられます。

 私自身は4歳の時に踊り子、10歳、16歳の時に囃子の子若連として参加しました。その後の2回は県外にいたため参加できませんでしたので、今回が18年ぶりの参加。年が明けて1月には初集会があり、2月からはすでに練習が始まっております。

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2013年の七年祭の写真です。写真を見返していただけでテンションが上がってきました!現在、練習の真っ只中です!ぜひ6月23〜29日は高浜にお越しください!!

 

 高浜にはこの祭りを愛している人が本当に多くて。会うと必ず祭りの話をする人が何人もいます。「この間の祭りは〜」とか「◯◯年の祭りは〜」とか「もうすぐ祭りやな!楽しみやな!」と、よく聞きます。

1910019_pho01.png私の某SNSのアイコンにもなっているこの写真。実は私が4歳の時に七年祭で踊った時の写真なんです。すごくかわいくて人気があったようで、今でもこの写真を見て「あのときはかわいかった!」と言ってくださる方もいらっしゃいます

kani_icon_redpurple.jpg「地縁型コミュニティ」と「テーマ型コミュニティ」、「安心」と「自由」のトレードオフ

 さて、このイベントや祭りですが、以前と比べると少しずつ「人」の面で実行が難しくなっている気がしています。ただ単純に少子高齢化にて担い手不足というのもあるのですが、それ以上に地域コミュニティが希薄になってきていることが原因と考えています。

 地域コミュニティは「地域の縁」でつながっているコミュニティなので「地縁型コミュニティ」と呼ばれます。その一方で、今発達してきているインターネットやSNSを介してできた、共通の関心で結びついたコミュニティは「テーマ型コミュニティ」と呼ばれます。

 そしてこの「地縁型コミュニティ」が希薄になってきていると実感しております。以前は商店街に店がたくさんあり、コミュニティの結びつきが強かった地区にいるからこそ、余計に感じるのかもしれません。しかし、それは私のいる地区だけではないと思います。

 昔は「地縁型コミュニティ」に属するのが当たり前でした。しかし、インターネットの発達により「テーマ型コミュニティ」が増えたことで、「地縁型コミュニティ」に属する必要がなくなったり、もっと気の合う仲間ができて面倒になったり、地縁型の結びつきが嫌で外に出て行った人もいると考えられています。

 この「地縁型コミュニティ」と「テーマ型コミュニティ」は、「安心」と「自由」で表現されることがあります。前者は安心だけど自由がない、後者は安心がないけれど自由がある。

 私は大学の4年間とその後の社会人最初の7年間を他の地域で過ごして地元に帰ってきました。そして以前いた「地縁型コミュニティ」に、再度、属することになったのですが、そこにあったのは圧倒的な安心感でした。10年以上離れていたので、その温かさをとてもありがたく感じました。その一方で、やはり自由は少なくなった印象です。面倒なことを頼まれたりイベントなどに参加しなければならなかったり。でもそれを上回るような安心があり、自分の居場所を再認識した感覚です。

 そして、この「地縁型コミュニティ」の結びつきを深くさせるのがイベントだったり祭りであったりするわけです。

 「テーマ型コミュニティ」に関しては、私もいくつか属しておりますが、どこの誰だか分からない人とつながっているケースが多く、安心感は少ない印象です。ただ、その中で結びつきが深くなり、安心感が得られるコミュニティもあるような気がします。また、自由度は高く、基本的には自主性が重んじられ、強制されることは少ないように思います。

tai_icon_red.jpg生きるを支える「地縁型コミュニティ」...その価値を見直す時期に

 さて、この仕事をしていると「地縁型コミュニティ」が医療・介護においてとても重要だと感じることがよくあります。

 社会的つながりと死亡リスクの関連を検討したメタアナリシスのレビューによると、社会的つながりの欠如は、健康関連リスクとして知られている喫煙、肥満、飲酒など医療上確立した健康関連リスクによる影響に匹敵するとのこと(PLoS Med 2010. 27; 7: e1000316. PMID: 20668659)。それだけでなく、医療・介護職だけで地域住民の生活の全てを支えるのは現実的ではありません。

 「地縁型コミュニティ」においては、近所の◯◯さんが買い物に行ってくれたり、身の回りの世話をしてくれる、そんなことはよくあります。逆にそういった頼れる方が全くいないと、生活が成り立たなくなることも多いです。家族がいないあるいは遠方の場合、高齢者のみでの生活は困難を伴うことが往々にしてあります。介護介入にて問題なく生活できているケースもありますが、地域でのつながりがあれば、よりよい生活ができるのではないかと思います。また、今後はますます介護の人材不足が拡大すると推定されていますので、そういった点からも、このようなつながりが重要になってくると考えております。

 少子高齢化社会となった今、「地縁型コミュニティ」を見直す時期に来ているのかもしれません。これは、医療介護職であり、一旦離れてそこに戻ってきた私だから感じられることかもしれません。「テーマ型コミュニティ」に慣れた人に理解してもらうのは、なかなか難しいとは思います。でも、このまま放置したら、自分が介護する立場になるまでその大切さに気付かないかもしれません。それに気付いた者として、「地縁型コミュニティ」のそのような側面について、少しでも多くの人に伝えていくことができればと考えております。

参考図書:

『WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE〜現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ〜』 佐渡島傭平著, 幻冬社

『縮充する日本 「参加」が創り出す人口減少社会の希望』 山崎亮著, PTP新書

【コラムコンセプト】

たくさんある薬剤師としての働き方の中から選んだ、地域に根ざして働く病院薬剤師。地域に対して何ができるのだろうかと日々考えながら業務をしています。田舎はたいへんなことも多いけど、田舎ならではのおもしろいこともすごく多いです。何か目立つことをするわけではなく、地味に細々と活動している薬剤師がたくさんいることを知っていただき、同じような境遇で働く薬剤師を少しでも勇気づけることができれば幸いです。

【野田学氏プロフィール】

NodaManabu.jpgJCHO若狭高浜病院薬剤科所属。薬学部卒業後、7年間の山口県でのチェーン調剤薬局勤務を経て、地元である福井県の病院に勤めだして5年目。生まれ育った人口1万人ほどの自然豊かな小さな町にある唯一の病院で、のほほーんと勤めながら、薬剤師・医療者・地域住民として自分に何ができるのかを日々模索中。ブログで地域での活動の様子や日々の業務で考えたことなどを書いています。

ブログ:リンコ's diary 田舎の地域医療を志す薬剤師

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