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毛髪用薬~どんな発毛剤がイイですか?- 後編

医療法人社団徳仁会中野病院 青島周一

2019年02月15日 10:00

患者さんに自信を持ってOTCをおすすめしたい!論文情報や患者さん対応など、薬剤師による薬剤師のためのOTC解説です。

薬の無料アイコン9.png今回のお話「どの発毛剤を選べばいい?」

  • 発毛サイクルと、抜け毛が増える時期
  • 抜け毛を防ぐ食事やサプリメント
  • 脱毛の種類とAGA
  • AGAを発症しやすい人
  • AGAによる脱毛の発生メカニズムとその治療薬(医療用医薬品)
  • AGAに対するOTC医薬品
  • 結局のところどうするか

薬の無料アイコン9.png今回出てくるOTCは・・・

リアップXSプラスローション(大正製薬株式会社)、リアップジェット(大正製薬株式会社)リアップ(大正製薬株式会社)、リアッププラス(大正製薬株式会社)、リアップリジェンヌ(大正製薬株式会社)、スカルプDメディカルミノキ5(アンファー株式会社)、リグロES5(ロート製薬株式会社)、ミノアップ(東和薬品株式会社)


薬の無料アイコン9 (1).pngAGAを発症しやすい人

 AGAと家族歴や生活習慣との関連性について、韓国のAGA患者3,114例を対象とした研究20)では、食事習慣や睡眠習慣と、脱毛重症度の間に関連性は見られませんでした。しかし、飲酒と喫煙は男性におけるAGAの重症度と関連していました。また、家族歴のある男女両方の患者において脱毛がより進行しており、さらに家族歴のある男性のAGA発症年齢は、家族歴のない男性よりも早かったという結果でした。

 40歳以上の台湾人男性740例を対象とした研究21)では、年齢、家族歴で調整後、中等度から重度のAGAと喫煙状況に有意な関連性が認められており(オッズ比1.77[95%CI 1.14-2.76])、 20本以上の喫煙ではより高い関連性が示されました(同2.34[95%CI1.1~4.59])。

 抜け毛予防には、バランスの良い食事の摂取とともに、飲酒機会を減らし禁煙をしてみるのも効果的かもしれません。

薬の無料アイコン9 (1).pngAGAによる脱毛の発生メカニズムとその治療薬(医療用医薬品)

 男性ホルモンであるテストステロンは、骨や筋肉の発達を促し、ひげや胸毛などの体毛を濃くする方向に働きます。しかし、前頭部や頭頂部などの男性ホルモン感受性毛包においては、逆に軟毛化現象を引き起こすことが知られています。

 男性ホルモン感受性毛包の毛乳頭細胞には男性ホルモン受容体が存在しますが、ひげや前頭部、頭頂部の毛乳頭細胞に運ばれたテストステロンは5α-還元酵素の働きにより、さらに活性が高いジヒドロテストステロン(DHT)に変換されて受容体に結合します。

 DHTの結合した男性ホルモン受容体は、ひげにおいては、細胞成長因子などを誘導し成長期が延長します(つまりひげが増える)。逆に前頭部や頭頂部の男性ホルモン感受性毛包では、DHTの結合した男性ホルモン受容体が毛母細胞の増殖を抑制し成長期が短縮します(つまり頭髪は減る)22)

 そのため、5α-還元酵素を阻害することでDHT(ジヒドロテストステロン)産生を抑制する、フィナステリドプロペシア®)やデュタステリドザガーロ®)が医療用医薬品として用いられます。参考までに、AGAに対するフィナステリドとデュタステリドの効果について簡単にご紹介します。

■フィナステリドの内服は有用か?

 AGAに対するフィナステリドの有効性について12研究(解析対象3,927例)のチステマチックレビュー・メタ解析が報告されています23)。解析の結果、頭髪の改善を報告した患者の割合は、短期治療、長期治療とも、プラセボ治療群よりもフィナステリド治療群で高いという結果でした。

 頭髪の改善を報告した人の割合は、短期治療で相対リスク1.81 [95%CI 1.42-2.32]、長期治療で相対リスク1.71 [95%CI 1.15-2.53]であり、1人の毛髪改善効果を得るために必要な治療人数は、短期間治療で5.6人(NNT5.6[95%CI 4.6-7.0])長期間治療で 3.4人(同3.4[CI 2.6-5.1]) でした。

■デュタステリドの内服は有用か?

 AGAに対するデュタステリドの有効性について、20〜50歳のAGA男性917例を対象としたランダム化比較試験24)が報告されています。

 この研究では、デュタステリド0.02mg投与群、デュタステリド0.1 mg投与群、デュタステリド0.5 mg投与群、フィナステリド1 mg投与群、プラセボ投与群の5群にランダム化され、24週間治療が行われました。その結果、毛髪数と毛髪の直径はデュタステリド群で用量依存的に増加したと報告されています。またデュタステリド0.5mgは、フィナステリドおよびプラセボと比較して、24週目の毛髪数、毛髪直径、いずれも有意に改善させたという結果でした。

 さらに、18〜40歳のAGA男性90例を対象とした非盲検ランダム化比較試験25)では、デュタステリド0.5mgはフィナステリド1mgよりも、頭髪量の改善効果に優れており、副作用プロファイルは同等だったと報告されています。デュタステリド0.5mgは、フィナステリド1mgよりも優れた効果を期待できるかもしれませんが、その添付文書上の用法・用量は「男性成人には、通常、デュタステリドとして0.1mgを1日1回経口投与する。なお、必要に応じて0.5mgを1日1回経口投与する」となっています。

薬の無料アイコン9 (1).pngAGAに対するOTC医薬品

 市販薬でAGAに対する質の高いエビデンスを有するのは、ミノキシジル含有製剤のみです26)。ミノキシジルは本来、血管拡張薬として開発された薬剤でしたが、後に発毛効果があるとされ発毛剤に転用されました。

 その薬理作用については不明な部分も多いですが、毛乳頭細胞や毛母細胞を活性化させることによると考えられています27)。主なミノキシジル配合医薬品を【表4】にまとめます。

■ミノキシジル製剤の有効性・安全性

 18~49歳のAGA男性393例を対象にした二重盲検ランダム化比較試験28)では、ミノキシジル5%外用製剤はミノキシジル2%外用製剤およびプラセボよりも、頭髪量の増加効果に優れていることが報告されています。

 48週の治療において、研究開始時からの非軟毛数変化は、5%ミノキシジル群でプラセボ群およびミノキシジル2%外用製剤群よりも有意に増加し、ミノキシジル2%外用製剤群との比較では45%の増加が示されています。

【表4】ミノキシジル配合OTC医薬品

毛髪用薬4.png(筆者作成)

 市販のミノキシジル製剤は1%か5%の2種類ですが、この試験結果を踏まえれば、1%含有製品よりも5%含有製剤の方がより効果的といえるでしょう。とはいえ、ミノキシジルの有害事象として瘙痒、紅斑、落屑、毛包炎、接触皮膚炎、顔面の多毛などが報告されています。この試験でも瘙痒や接触皮膚炎といった皮膚症状の出現率は、ミノキシジル群2%外用製剤りもミノキシジル5%外用製剤群で高かったことが報告されており注意が必要です。

 女性のAGAに対する有効性はどうでしょうか。女性のAGAにおいては、ミノキシジル2%とミノキシジル5%の効果はほぼ同等であり、どちらも有効であるとするシステマチックレビュー29)が報告されていますが、日本で承認されている女性用のミノキシジル製剤は、リアップリジェンヌのみであり、ミノキシジルの配合量は1%となっています。

 ミノキシジル1%製剤の有用性については、280例の日本人女性被験者を対象としたプラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験30)が報告されています。

 24週の治療で、脱毛部 1 cm2 内の非軟毛増加数は、プラセボ群が平均2.03 本、ミノキシジル1%製剤群が平均 8.15 本と、ミノキシジル1%製剤群はプラセボ群と比較して有意な発毛促進効果が示されました。

 なお、日本ではAGAに対する医薬品として承認されていませんが、有効性が示唆されている薬剤として、ラタノプロスト(0.1%製剤)31)や、漢方製剤32)〔台湾保健省により認可されている薬用人参、黄耆、当帰、アカヤジオウ、女貞子(トウネズミモチ)、レイチョウで構成される漢方製剤〕があります。

薬の無料アイコン9 (1).png結局のところどうするか

 さて、抜け毛の相談を受けた場合、結局のところどうすればよいでしょうか。相談客の状況に応じて、以下の2つに分けて考えてみましょう。

■典型的なAGA所見を有さず、毛髪量は維持されているが、抜け毛が気になる場合

 まずは、1日50~100本程度の抜け毛であれば心配ないことをお伝えします。相談された時期も考慮に入れ、夏にかけて抜け毛が増える可能性がありうることを説明してもよいでしょう。どうしても抜け毛が気になるようでしたら、高額な医薬品ではなく、トコトリエノールなどのサプリメントを服用しながら秋まで様子を見るという選択肢もあります。特に食事が偏りがちな人では、亜鉛サプリメントも考慮できるかもしれません。

 いずれにせよ、ミノキシジルの臨床試験はAGA患者を対象としており、それ以外の脱毛症に対する効果は明確ではありません。典型的なAGAの所見を有さない状態で、AGAの発症や抜け毛に対する予防効果は不明です。

■典型的なAGA所見を有し、毛髪量が明らかに少ない場合

 OTC医薬品としてミノキシジル製剤が考慮できます。有効性の観点からすれば、男性では5%製剤を推奨したいところです。とはいえ、局所副作用のリスクも高まりますので、これまでの薬剤使用歴を聴取し、5%製剤で頭皮の異常を感じた経験がある場合では慎重な対応を要します。それでもミノキシジルによる治療を継続したという希望があるケースでは、1%製剤で経過を見るという方法もあるでしょう。当然ながら女性では、ミノキシジル1%製剤であるリアップリジェンヌが考慮できます。

 ミノキシジル製剤は有効性が検証されている唯一の薬剤ではありますが、長期的な使用が前提となりますので、薬剤コストの負担も大きいはずです。偏りがちな食習慣の是正やサプリメント、喫煙者では禁煙、あるいはミノキシジル以外のOTC医薬品なども、状況に応じて提案するとよいでしょう。

 また、どうしても強い効果を希望する場合では、ミノキシジル製剤と合わせてトコトリエノールや亜鉛サプリメントを勧めてもよいかもしれませんが、現段階でミノキシジルとサプリメントとの併用効果については質の高いデータはありません。AGA外来を行っている医療機関受診を勧めるのも選択肢の1つとなるでしょう。

 薬ビンのアイコン素材.png

【参考文献】
1) 臨床毛髪学会 脱毛症について 
2) Am Fam Physician. 2017 Sep 15;96(6):371-378. PMID: 28925637
3) Dermatology. 2009;219(2):105-10. PMID: 19407435
4) Br J Dermatol. 2018 Apr;178(4):978-979. PMID: 29048738
5) Dermatol Pract Concept. 2017 Jan 31;7(1):1-10 PMID: 28243487
6) Skin Appendage Disord. 2017 Aug;3(3):166-169. PMID: 28879195
7) Exp Dermatol. 2005 Nov;14(11):844-53. PMID: 16232307
8) Ann Dermatol. 2013 Nov;25(4):405-9. PMID: 24371385
9) J Res Pharm Pract. 2017 Apr-Jun;6(2):89-93. PMID: 28616431
10) 皮膚科領域における亜鉛の臨床効果については以下のレビュー文献がお薦めです。
  Dermatol Res Pract. 2014;2014:709152. PMID: 25120566
11) 健康食品素材別データベース 亜鉛
12) Cell Biochem Funct. 2000 Sep;18(3):169-73. PMID: 10965354
13) Asia Pac J Clin Nutr. 1997 Mar;6(1):63-7. PMID: 24394657
14) Free Radic Biol Med. 1991;10(5):263-75. PMID: 1649783
15) Trop Life Sci Res. 2010 Dec;21(2):91-9. PMID: 24575202
16) Growth Horm IGF Res. 2007 Oct;17(5):408-15PMID: 17569567
17) 日本皮膚科学会:男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版
18) Br J Dermatol. 2010 Apr;162(4):843-7 PMID: 20105167
19)西日本皮膚科 / 78 巻 (2016) 3 号p. 252-256.DOI: 10.2336/nishinihonhifu.78.252
20) Clin Exp Dermatol. 2014 Jan;39(1):25-9. PMID: 24341477
21) Arch Dermatol. 2007 Nov;143(11):1401-6. PMID: 18025364
22) Plast Reconstr Surg Glob Open. 2013 Nov 7;1(7):e64. PMID: 25289259
23) Arch Dermatol. 2010 Oct;146(10):1141-50. PMID: 20956649
24) J Am Acad Dermatol. 2014 Mar;70(3):489-498.e3. PMID: 24411083
25) Indian J Dermatol Venereol Leprol. 2017 Jan-Feb;83(1):47-54.PMID: 27549867
26) 日本皮膚科学会の『男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版』によれば、第3類医薬品のカロヤン®シリーズなどに含有されているカルプロニウム塩化物の有用性に関して、AGAに対する 4 件の症例集積研究と 1 件の非ランダム化比較試験が実施されているとの記載があります。いずれも有効性を検討するに当たり質の高い研究とはいえず、本稿ではミノキシジル含有製剤のみと記載しました。
27) 日本薬理学雑誌.2002 年 119 巻 3 号 p. 167-174.DOI: 10.1254/fpj.119.167
28) J Am Acad Dermatol. 2002 Sep;47(3):377-85. PMID: 12196747
29) Cochrane Database Syst Rev. 2016 May 26;(5):CD007628. PMID: 27225981
30) Eur J Dermatol. 2007 Jan-Feb;17(1):37-44. PMID: 17324826
31) J Am Acad Dermatol. 2012 May;66(5):794-800. PMID: 21875758
32) Exp Ther Med. 2017 Jan;13(1):194-202. PMID: 28123489

【連載コンセプト】
薬剤師、登録販売者のためのOTC連載です。OTC医薬品に対する考え方、使い方について「実践的」に整理します。筆者のドラックストアでのバイト経験と、具体的な薬剤エビデンスに基づき、実際の患者にどうアプローチしていけばよいのか、ピットフォールなどを交えて解説していきます。

【プロフィール】
aoshimashi.jpg

保険薬局勤務を経て、現在は病院薬剤師。NPO法人AHEADMAP共同代表。
普段は論文を読みながら医師に対して処方提案などを行っていますが、薬剤師によるEBMの実践とその普及に関する活動もしています。

公式ブログ:思想的、疫学的、医療について
Twitter:@syuichiao89

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