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毛髪用薬~どんな発毛剤がイイですか?- 前編

医療法人社団徳仁会中野病院 青島周一

2019年02月15日 10:00

患者さんに自信を持ってOTCをおすすめしたい!論文情報や患者さん対応など、薬剤師による薬剤師のためのOTC解説です。

薬の無料アイコン9.png今回のお話「どの発毛剤を選べばいい?」

  • 発毛サイクルと、抜け毛が増える時期
  • 抜け毛を防ぐ食事やサプリメント
  • 脱毛の種類とAGA
  • AGAを発症しやすい人
  • AGAによる脱毛の発生メカニズムとその治療薬(医療用医薬品)
  • AGAに対するOTC医薬品
  • 結局のところどうするか

薬の無料アイコン9.png今回出てくるOTCは・・・

リアップXSプラスローション(大正製薬株式会社)、リアップジェット(大正製薬株式会社)リアップ(大正製薬株式会社)、リアッププラス(大正製薬株式会社)、リアップリジェンヌ(大正製薬株式会社)、スカルプDメディカルミノキ5(アンファー株式会社)、リグロES5(ロート製薬株式会社)、ミノアップ(東和薬品株式会社)


 神妙な面持ちで、お薬相談カウンターにやって来た40歳代くらいの男性客。自分の頭を指さしながら、薬剤師のあなたに質問をしてきました。

「最近、抜け毛が気になるんです。こういう場合、早めに育毛剤を付けた方がよいのでしょうか……」

 そういえば自分も、抜け毛が気になっていたところでした。目の前に大きく書かれた『リアップ®X5プラスローション』のポップから視線を外せなくなってしまったあなた。でも、いざ買うとなると値段高いのよねぇ……と、しばし思い悩んでしまいました。

薬の無料アイコン9 (1).png発毛サイクルと、抜け毛が増える時期

 人間の体表には約150万本の毛髪があり、そのうち頭髪は10万~15万本といわれています1)。頭髪は、生涯伸び続けているわけではなく、一定の期間を経ると自然に抜け落ち、抜け落ちた所からまた新しい髪が生えてくるというサイクルを繰り返しています。一般的には発毛周期などと呼ばれますが、このサイクルは成長期、退行期、休止期の3段階に分けることができます2)

 成長期は、文字通り頭髪が活発な成長をしている段階です。成長期にある頭髪は全体の約90%を占めていますが、一定期間後に成長が止まる退行期に移行します。退行期にある頭髪は、10%未満といわれています。さらに休止期に入ると、頭髪は自然に抜け落ちていきます。この休止期にある頭髪は5~10%程度です。1日当たり50~100本程度の頭髪が抜け落ちるのは、自然な生理現象であり、この程度であれば抜け毛を心配する必要はありません。

 ところで、毛の生え替わりの季節、なんていわれるように、抜け毛と季節には関連性があるように感じる方も多いでしょう。動物では、毛の生え替わりのことを換毛と呼び、換毛が起きる季節のことを換毛期といいます。換毛の目的は主に体温調節であり、当然ながら気温が上昇する時期に、毛髪量は少なくなります。

 抜け毛と季節の関連性について、823例の女性(平均44.3歳)を対象とした症例集積研究3)では、抜け毛は夏に多く、冬に少ない可能性が示されています。また、2018年にHsiangらによって報告された研究4)では、Googleの検索による「抜け毛」の検索傾向(Googleトレンド)と季節の関連が検討されました。この研究では、2004年1月~16年10月におけるGoogleでの検索トピックとして、「抜け毛」の検索傾向が解析されています。その結果、抜け毛に対する検索は、春と比較して、夏や秋に多い傾向が示されました。また弱いながらも、気温が高くなると検索が増えるという傾向が示されており、このことから、気温が高い季節に抜け毛が増える可能性が示唆されます【表1】。

【表1】検索トピック「抜け毛」と季節の関連性

毛髪用薬1.png※回帰係数が大きいほど、関連性(相関関係)が強い
(参考文献4より筆者作成)

 もちろん、これらの研究結果は、季節や気温の変化が抜け毛を増やすというような、因果関係を決定付けるものではありません。頭髪が抜け落ちる要因は多岐にわたるため、見かけ上の関連性(相関関係)にすぎない可能性もあります。とはいえ、動物の換毛と同様に、人間の毛髪についても、季節や温度と関連性があるという仮説が否定されたわけではなく、むしろ支持する結果となっています。例えば、夏に抜け毛の相談に来られた方については、状況に応じて、『今すぐ薬を使うのではなく、秋から冬になるまで様子を見てもよいかもしれない』という説明もできるでしょう。

薬の無料アイコン9 (1).png抜け毛を防ぐ食事やサプリメント

 抜け毛が気になる方にとって、抜け毛予防に効果のある食材やサプリメントは気になるテーマだと思います。確かに抜け毛は、ビタミンやミネラル類の不足で起こりえます5,6)。増毛効果が示唆されている主な栄養成分には、亜鉛、ビタミンE(トコトリエノール)、イソフラボン、カプサイシンなどがあります。

■亜鉛サプリメントは効果があるのか?

 亜鉛は、頭髪を構成している蛋白質であるケラチン合成に必要な微量元素であり、実際にマウスを用いた研究7)では、高用量の亜鉛投与は育毛調節に影響を及ぼすと報告されています。また、脱毛症患者312例と健常者30例を比較した研究8)では、脱毛症患者で血中の亜鉛濃度が低下している人が多いという結果でした。もちろん、この研究では、脱毛症患者に亜鉛が不足している人が多いことを示したにすぎず、亜鉛が不足しているから脱毛症が多いということを明らかにしたわけではありません。

 とはいえ、15~45歳の女性76例(平均28.9歳)を対象にしたランダム化比較試験9)では、亜鉛の経口摂取による頭髪の増加が示唆されました。この試験では、被験者を亜鉛とパントテン酸カルシウムの併用群(20例)、亜鉛単独群(18例)、パントテン酸カルシウム単独群(20例)、ミノキシジル2%外用製剤群(18例)の4群にランダム化しており、頭髪密度と毛髪の直径の変化が比較検討されています。

 4カ月の治療の後、亜鉛とパントテン酸カルシウム併用群では、頭髪密度が118.6 ± 9.9 本/cm2 から 121.9 ± 11.1 本/cm2へと有意な増加を認めましたが、毛髪の直径に関しては増加傾向は見られたものの、有意な差はありませんでした。

 他方、ミノキシジル2%外用製剤群では頭髪密度が120.1 ± 9.7本/cm2 から132.3 ± 10.5 本/cm2、そして毛髪の直径が60 ± 3.1 μmから63 ± 3.0 μmと、いずれも有意に増加しました。また、亜鉛単独群では毛髪直径に関して、パントテン酸カルシウム単独では頭髪密度と毛髪の直径に関して、有意な変化を認めています。なお、ミノキシジルの有効性・安全性に関する詳細は後述します。

 いずれの群においても、頭髪に有用な効果が示唆されていますが、亜鉛とパントテン酸カルシウム併用投与、亜鉛単独投与、パントテン酸カルシウム単独投与において、頭髪密度や毛髪の直径に対する有効性に一貫性が見られません【表2】。たまたま有意な差がついた可能性もあり(これを第1種の統計過誤と呼びます)、結果の解釈は慎重にすべきです。またこの試験は盲検化がなされておらず、試験参加者の行動が結果に影響を与えるようなバイアスを生んでいる可能性もあります。

【表2】亜鉛サプリメント、パントテン酸カルシウム、ミノキシジルの有効性

毛髪用薬2.png(参考文献4より引用)

 亜鉛の欠乏状態にある人においては、亜鉛サプリメントの摂取になんらかの効果を期待できるかもしれませんが、そうでない人では、明確な抜け毛予防効果が期待できるかは明確ではありません10)。ちなみに、国立研究開発法人医療基盤・健康・栄養研究所が運営する「『健康食品』の安全性・有効性情報」の素材情報データベースには、脱毛症に対する亜鉛は「効果がないことが示唆されている」と記載されています11)

■ビタミンE(トコトリエノール)サプリメントは効果があるのか?

 ビタミンEには血行促進作用があるといわれています。また、脱毛症と酸化ストレスには関連性があると考えられています12)が、ビタミンEは強力な抗酸化作用を有しています13、14)。頭髪に良い影響を与えそうなイメージがあるビタミンEの摂取は、脱毛症に効果があるのでしょうか?

 実際、ビタミンEの一種であるトコトリエノールが頭髪量を増加させたというプラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験15)が報告されています。

 この試験では18〜60歳の男女38例が対象となり、2×2cmの領域における頭髪量が検討されました。その結果、試験開始時と比較して8カ月後では、トコトリエノール(100mg/日)群で34.5%の毛髪量増加が見られましたが、プラセボ群では-0.1%と増加は見られませんでした。

 こちらも小規模の試験であるため、結果の妥当性については議論の余地がありますが、トコトリエノールはサプリメントとして市販もされていますので、気になる人は試してみてもよいでしょう。

■イソフラボンやカプサイシンサプリメントは効果があるのか?

 インターネット上では、女性ホルモン様作用を有するイソフラボンや、血行促進作用のあるカプサイシンが、抜け毛を予防するという情報も散見されますが、その効果は仮説の域を出ません。確かにマウスを対象とした研究16)で、カプサイシンやイソフラボンの発毛促進効果が示唆されていますが、ヒトを対象にした質の高い研究報告は現時点でありません。

 以上をまとめると、特定のサプリメントによる毛髪量の増加効果について、質の高い研究データは不足している印象です。栄養バランスに偏りのない食事を摂取することが肝要であるといえるでしょう。

薬の無料アイコン9 (1).png脱毛の種類とAGA

 抜け毛の要因は多岐にわたります【表3】。

【表3】主な脱毛症の種類

毛髪用薬3.png

(引用文献2より筆者作成)

 今回は、ドラッグストアや薬局窓口でも対応可能なアンドロゲン性脱毛症(Androgenetic alopecia;AGA)に対するOTC医薬品についてまとめていきます。なお、AGAは男性型脱毛症とも呼ばれますが、女性でも発症します。AGAは脱毛症の最も一般的な形態であり、通常の生理学的現象ともいえ、日本人男性の場合には20歳代後半~30歳代にかけて出現することが多く、徐々に進行して40歳代以後に完成されます17)

 中国人1万7,886例を対象とした横断調査18)では、AGAの全体的な有病率は男性において21.3%であり、年齢別には18~29歳で2.8%、30~39歳で13.3% 、40~49歳で21.4% 、50~59歳で 31.9%、60~69歳で 36.2% 、70歳以上では41.4%という結果でした。

AGAを発症しやすいのはどんな人?内服薬や外用剤があるけれど、何を選べばよい?ーー次のページで解説します。

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