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1. 薬物動態の変化を伴う薬物相互作用ーはじめに(2019)

2019年02月21日 13:30

独立行政法人理化学研究所 イノベーション推進センター
杉山特別研究室 杉山雄一
東京大学医学部附属病院 薬剤部 鈴木洋史

 薬物相互作用とは薬物の併用により薬効の増強や減弱、副作用の発生などの変化を生じることで、薬理学的相乗作用等で生じる薬力学的なものと、体内動態変化を伴う薬物動態学的なものの2種類があります。日本で使われる治療薬は2,000~3,000 種といわれ、その組み合わせの相互作用を全て調査検証して列挙することは、とても不可能です。

 したがって、相互作用を機構(しくみ)によりグループ分けし、それと薬剤のグループの組み合わせでリスクを判断する考え方が必要です。本特集の薬物動態の変化を伴う相互作用に関連する薬のリストはそのような考え方を支援するために、私たちが2009年から更新を加えつつ本誌に掲載してきたものです。またその間に筆者の一部も参加して、2018年7月には「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン」が作成されました。

 このガイドラインは、新薬開発時に相互作用の可能性を見落とさず、また見いだした場合は、情報を医薬品添付文書により適切に伝達するためのものですが、その中で相互作用の可能性を「強い阻害剤」などの表現で分類する方法は、私たちが提唱してきた、薬剤をグループ分けする方法と考え方が共通しています。その意味では本特集はガイドラインと血縁関係にあるといえます。ただし、この特集では、消化管内の相互作用やトランスポーターに関して積極的に記載するなど、ガイドラインとは異なる独自の特徴もあります。

 薬物の体内動態を制御する薬物代謝酵素やトランスポーターの活性を変化させる阻害薬や誘導薬は、基質薬に薬物相互作用を引き起こします。このポスターは臨床で観察されたエビデンスに可能な限り基づいて、その中でリスクの高い相互作用薬を一覧するものです。その点で、それらを組み合わせて服用した場合には、薬物動態変化がおきる可能性があるということです。ただし、その変化に対して臨床的対応を取るべきかの決定には、治療状況を理解したユーザーの判断が必要です。

 この表は治療状況と添付文書を正しく認識した上で、情報の理解を深め補足するためのものです。決して対処の早見表ではありません。相互作用への対処が、薬物動態の機械的チェックになると危険です。また、基質薬、すなわち相互作用を受ける薬同士を一般の用量で併用しても、ほとんどの場合に薬物相互作用は認められないのでご注意ください。

 十分な臨床の知識を持つ薬剤師こそが、このポスターを上手に使いこなすことが可能であり、それによってのみ医療の本質的な質の向上が実現するのです。

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日本語版ポスター 英語版ポスター

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