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第19回 二次離島住民へのかかりつけ薬局定着事業、本格始動です!

島々の住民と共に生きる〜長崎県五島市・薬剤師奮戦記 ゆうとく薬局 平山匡彦

2019年03月05日 11:30

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「薬をもらってきたのだけれど、一緒に飲んでもいいんでしょうか」

 ある日の午後のことです。1本の電話がありました。

「久賀からなんですが、今朝、のどの調子が悪くて診療所で薬をもらってきたのだけど、整形で膝の痛み止めをもらっていることをお医者さんに言うのを忘れていて。一緒に飲んでもいいんでしょうか」とのこと。

 皆さん忘れているかもしれませんが、私たちは、平成27(2015)年度から、二次離島調査研究の第4弾として、島の皆さんに五島市内の「かかりつけ薬局一覧表」を配布し、薬で分からないことがあったら、いつでもいいので一覧表の薬局に電話してくださいという「二次離島住民に対するかかりつけ薬局定着事業」を始めていたのです。

 この電話は、このことがきっかけになって、いただいた電話でした。一覧表に掲載されている薬局は20軒ほどあるのですが、私が紹介して回っていますので、どうしても私のところへの電話が多くなってしまいます。

 私からも「お電話ありがとうございます。何という薬をもらっているのか教えていあだけませんか?」とお聞きすると、「今日もらってきたのは、アストミン、トランサミン、ムコダインという薬だったんだけど、膝が痛くて、いつもロキソプロフェンという薬をもらって飲んでます。一緒に飲んでもいいのでしょうか」とのことでした。

 そこで私は「一緒に飲んでも大丈夫ですよ。食後すぐにコップ1杯の多めの水で服用してくださいね」と回答します。すると「ありがとう。安心して服用できます」とのことでした。よかったです。少しはお役に立てたようです。

「こん水で飲まんほうがよかか?どがんじゃろか?」

 これも久賀島の別の地区の方からの電話でした。「ボノテオっち言う骨ん薬ばのんじょっとじゃばってん、こん前、同じアルカリ温泉水ば買うて飲んじょっ人が、こん水で骨ん薬は飲まん方がよかって言われたっていいよった。どがんじゃろか」とのこと。

 アルカリ温泉水は、かなりアルカリに傾いており、しかもミネラルをふんだんに含んでいます。島を回っていますと、健康にいいからと大量に購入する方が多く、私たちも驚きました。久賀島なんて、とてもいい水が湧いているのだから、島のおいしい水を飲めばいいのにと思うのですが、そこを否定するわけにもいきません。しかし、薬との飲み合わせに関しては、pHと豊富なミネラルからみて、やはり注意しなければならないと思います。なのでこのときには「今飲んでる骨の薬は、水道水や島の水で飲んでね。アルカリ温泉水は、骨の薬を飲んだ後30分したら、いくらでも飲んでいいからね」と答えます。

「間違って飲んじゃった、どうしよう?」

 私以外の薬局へも電話があったそうです。内科で1日2回朝夕食前服用するよう指示のあった漢方薬を、朝飲んで、さらに昼にも飲んでしまったとのこと。この相談に関しては、夕方服用する分を飛ばして服用するように説明したそうです。

 私たち薬剤師にとっては何でもないように思われるようなことも、一般の方にとっては、どうしようとドキドキされるのかもしれません。

 なんだかんだで、平成27年の6月からスタートして半年間で、二次離島の方たちから8本の電話相談がありました。内訳としては、相互作用に関するものが5件と最も多かったです。

 この事業は、この後もまだ続きますのでまた紹介させていただくとして、相談を受け付ける相乗効果なのでしょうか。説明会のときに、自分が服用している薬を持ってきて薬の相談をしに来る人が多くなってきました。

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お薬説明会に持参してもらった薬の相談を受けています

中には相談ついでに説明会に参加する人も。

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気軽に顔を合わせて相談に応じられるのもお薬説明会開催のメリットです

 平成27年度は、10カ所の会場でお薬説明会をして、101名の参加をいただいたのですが、そのうち39名の方が、お薬手帳や自分が服用している薬を持参して、薬や健康について相談をしに来てくれたのです。薬剤師に、薬の相談をしたいという住民の方が多くなってきたということは、お薬説明会を継続してきたことで、島の皆さんにとって薬剤師が身近になってきたと言えるのかもしれません。やっぱりこの説明会、やめられません。

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お薬説明会終了後、お宅にお邪魔して相談に応じることもあります

 さて、では次はどの島に行ってみましょうか。

五島曳船詩・嵯峨島 姫御前

悲しみの中にも大きな愛を感じられる場所

 嵯峨島へ向かう渡海船の船着場である貝津港から海岸線沿いに少し歩くと、少し開けた場所に、ひっそりと置かれた小さな石碑がある。正面には、海を挟んで嵯峨島が見え、上を見上げると高浜海水浴場を望むことができる魚籃観音が見える。この場所は御姫崎と名付けられ、この石碑は姫御前と呼ばれて今も地域の人たちに大切に守られている。

goto19_monument.jpg姫御前

 玉之浦納の乱により、五島家の当主、宇久囲公は、黒島の地にて従者と共に自害をするが、囲公の嫡男三郎君が17歳になった春、名を盛定と改め、平戸藩の助成を得て玉之浦納を攻撃する。玉之浦納は玉之浦の大宝地区に居を構えていたものの、追っ手に攻められ、砦のある嵯峨島へと逃げ延びる。

 玉之浦納の妻も、夫である納を追ってこの地までたどり着くも、玉之浦納の船は一足違いで嵯峨島へ向かった後だという。それを知った奥方はこの地で自刃した。この奥方は、実は宇久囲公の妹君であるという。何とも悲しい歴史である。

 盛定公からすれば実の叔母であり、捕らわれたとしても殺されたりはしなかったであろう。事実、奥方を救うべく盛定公の家臣も奥方の後を追ったものの、玉之浦納の兵に討ち取られたという。

goto19_gyorancannon.jpg姫御前から見上げた先にある魚籃観音

 皆が何を思い、何を感じながら命を絶ったのか。奥方もどのような思いでこの地で自害したのか。今となっては知るすべはないが、信じるものを守ろうとした人がいる。そしてまた、この地を整備して守り続ける人もいる。悲しみの中にも大きな愛を感じられる場所でもある。夕暮れ、嵯峨島へ落ちる夕陽を見た。悲しくもあり美しい夕陽であった。

goto19_saganoshimasunset.jpg嵯峨島に沈む夕陽

【コラムコンセプト】

読者の皆さんは、薬局もなく薬剤師もいない離島があることを、そして、薬剤師とはどんな役割を担う医療者なのかを知らない人がいることをご存じですか。私は長崎県の五島列島にある福江島で、ゆうとく薬局という小さな薬局を経営している薬剤師です。長崎県薬剤師会離島対策委員会の活動として、東京大学の澤田康文教授との共同研究で、離島住民の医薬品適正使用に関する調査研究を行っています。これからしばらく、私の周辺で巻き起こったドタバタ劇を紹介させていただくことになりました。お付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

平山匡彦ひらやまただひこ氏 プロフィール】

大学では、写真部やハンドボール部など複数のクラブを掛け持ちするなど充実した学生生活を送る。卒業後は、石川県金hirayamatadahiko.jpg沢市の徳久和夫先生、綿谷小作先生に師事し、その後、郷里の長崎県五島市へ戻り、平成10(1998)年よりゆうとく薬局を独立開業。仕事の傍ら、友人たちとNPO団体を設立し、タウン情報誌の発行の他、さまざまな島おこし活動を行う。薬剤師会の活動としては、平成29(2017)年現在、一般社団法人長崎県薬剤師会理事及び一般社団法人五島薬剤師会理事を兼任。長崎県薬剤師会の離島対策委員会に所属し、東京大学の澤田康文教授の指導による離島住民の医薬品適正使用の調査をきっかけとして、現在、薬局がなく薬剤師が存在しないような島々を巡りながら、薬の説明会や相談会を継続開催している。

ゆうとく薬局:http://www.yutoku-ph.jp

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