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「地域包括ケア」時代に求められる病院薬剤師および地域における薬剤師の役割

田舎の薬剤師 地域医療への貢献を模索中!〜故郷を薬剤師として支えたい〜#10(最終回)

2019年03月27日 15:00

 さて、2018年6月から始まったこの連載も、今回で最後となります。今までを振り返りながら、「地域包括ケア」時代に求められる病院薬剤師および地域における薬剤師の役割について、私なりの解釈を書いていきたいと思います。

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先日、高浜町で開催された「第3回わくわくとくとくフェスタ(兼 第12回高浜町地域医療フォーラム)」。その中のイベントの1つとして「世界最大のちらし寿司プロジェクト」が企画され、参加してきました。高浜町は平城京跡から発見された木簡より日本最古のすし発祥の地と言われていることから、このイベントが発案されたようです。
結果、375.1kgにて見事にギネス記録に認定されました!
当日は多くの住民が参加され、「まちに出るほど健康になれるまち」づくりのイベントとしても大成功でした。翌日には、ハーバード大学のイチロー・カワチ教授のご講演を拝聴することもでき、充実した2日間となりました!

fugu_icon_purple.jpg「退院後を見据える」ことが病院薬剤師に重要な視点

 昨今、病院薬剤師の業務は多岐にわたるようになってきておりますが、地域包括ケア時代においての役割として「退院後を見据える」ということが非常に重要かと思います。入院中はさまざまな職種の目がありますので、何かあっても対応が可能です。一方で、在宅ではそうではありませんので、病院と同じ治療ができるとは限りません。

 在宅での生活を考える上では、生活環境を考慮することが重要です。施設なのか、自宅なのか。一人暮らしなのか、家族と同居なのか、どういった家族との同居なのか。薬を管理するのは誰か。利用する介護サービスはどのようなものがあるのか、どのような職種がかかわるのか。

 そういったことを考慮した上で、退院後の薬剤の管理は可能か、副作用に対処できるか、もっとリスクの低い薬剤に切り替えた方がいいのか、増やしたり減らしたりした方がよい薬がないか、などを考えないといけません。そういったことが想定されていないと、容易に再入院に至ってしまいます。

kani_icon_redpurple.jpg患者さんの生活の場でのQOLを支える情報共有を

「時々入院、ほぼ自宅」という言葉がありますが、私たち病院薬剤師が考えないといけないのは、病院は治療の場、いったん休憩の場であり、患者さんにとってのメインは在宅での生活であり、そこでのQOLだということかと思います。

 その中での病院薬剤師の重要なもう1つの役割は、在宅にかかわる職種、とりわけ薬局薬剤師への情報共有を行い、シームレスな在宅への移行を支えるということ。いわば、薬局薬剤師の業務をサポートすることだと思います。

 具体的には、入院時や入院中に把握した在宅生活での問題点、退院後の在宅生活での懸念事項や指導内容についての情報共有などです。場合によっては退院時カンファランスなどでの情報共有、意見交換も必要になってきます。

 逆に、薬局薬剤師からは、外来での情報や、退院時の問題点などについて、トレーシングレポートなどにて情報共有をしていただければ幸いです。

tai_icon_red.jpg薬剤師とは、まちの中で活躍するのが当たり前の医療職

 最後に地域への思いを。

 当コラムで地域に関することは散々書いてきましたので、改めて書く必要はないのかもしれませんが、少しだけ触れておきます。

 地元に戻ってきて、薬剤師として、また、地域住民の1人として地域のたくさんの方々と話をしてきました。そして、薬剤師がどんなことをする職業なのかがまだまだ分かってもらえていないことが、身に沁みて分かりました。

 先日、ある地域に出前講座に伺ったのですが、私の講演の後、とある男性から「今日は来てくれてありがとう。薬剤師はいろんなこと知っとるんやねぇ。抗生物質は何にでも効くと思っとったんやけど、使いすぎるのはあかんのやな」と言われ嬉しかった半面、まだまだ自分たちにはやらないといけないことがあることを実感しました。

 薬剤師はたくさんの知識を持っています。でも、持っているだけでは宝の持ち腐れです。患者、地域住民、また医療関係者へ適切な形で還元していく必要があるのではないでしょうか。普段は薬とは全く接点のない人でも、何かの機会に接することがあると思います。単に地域住民だと思っていた方が医療介護関係者だったこともありましたし、家族の介護を行われている方だったこともありました。私たちの知識が少しでも誰かの役に立てば、嬉しいことだと思います。

 薬剤師と他の医療職との大きな違い、それは、薬局には薬剤師がいることだと思います。病院や診療所には多くの医療職がいますが、やや敷居が高いように思いますし、それ以外の場所で店舗を構えている医療職は多くありません。薬剤師は薬局には確実にいますし、そういった意味では、最も身近な医療職なのではないかと思います。

 最近、まちの中で活動する医師やコミュニティナースが話題になることがあります。一方、そういった薬剤師が注目を浴びることはほとんどありません。それは、薬剤師というのが元来、そういった職種だからなのではないでしょうか。そして、それを当たり前のようにやってきたのだと思います。

 いわゆる「調剤薬局」が全盛になったことで失われつつありましたが、「地域包括ケア」時代になり、そういった役割が再び求められてきているように思います。

 病院薬剤師の立場から薬局へ注文するのはあまり好きではないのでこの辺にしておきますが、元薬局薬剤師として薬局には大いに期待しております。また、1人の薬剤師として、そこに少しでも加わっていければと考えております。

 10カ月間連載を書いてきて、わが町でできていること、まだできていないことがよく見えてきました。誇れることもありますが、まだまだそうでないところもたくさんあります。課題は満載です。周りの関係者と協力しながら、少しずつ解決していければと考えております。

 連載は今回で最後となりますが、ブログでは情報発信をし続けていきますので、今後はそちらにも注目していただければ幸いです。

 今まで読んでいただいてありがとうございました!

23114.png前回のコラムで紹介しました高浜七年祭、今年の6月23〜29日にかけて開催されます。そのポスターができあがりました!テンション上がりますね!
現在、私の所属する中町若連中では週4回の囃子の練習をしております。ご興味を持たれましたらぜひ高浜へお越しください!もし来られる際は連絡をくださいね!

【コラムコンセプト】

たくさんある薬剤師としての働き方の中から選んだ、地域に根ざして働く病院薬剤師。地域に対して何ができるのだろうかと日々考えながら業務をしています。田舎はたいへんなことも多いけど、田舎ならではのおもしろいこともすごく多いです。何か目立つことをするわけではなく、地味に細々と活動している薬剤師がたくさんいることを知っていただき、同じような境遇で働く薬剤師を少しでも勇気づけることができれば幸いです。

【野田学氏プロフィール】

NodaManabu.jpgJCHO若狭高浜病院薬剤科所属。薬学部卒業後、7年間の山口県でのチェーン調剤薬局勤務を経て、地元である福井県の病院に勤めだして5年目。生まれ育った人口1万人ほどの自然豊かな小さな町にある唯一の病院で、のほほーんと勤めながら、薬剤師・医療者・地域住民として自分に何ができるのかを日々模索中。ブログで地域での活動の様子や日々の業務で考えたことなどを書いています。

ブログ:リンコ's diary 田舎の地域医療を志す薬剤師

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