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鼻炎用薬~花粉症の点鼻薬と目薬、どれを選んだらイイですか?- 前編

医療法人社団徳仁会中野病院 青島周一

2019年04月04日 10:00

 患者さんに自信を持ってOTCをおすすめしたい!論文情報や患者さん対応など、薬剤師による薬剤師のためのOTC解説です。

薬の無料アイコン9.png今回のお話「どの花粉症の薬を選べばいい?」

  • 鼻噴霧ステロイド薬の効果は侮れない!
  • 鼻噴霧ステロイドは敬遠される?
  • 市販で購入できる主な点鼻薬
  • 鼻噴霧ステロイドの有効性・安全性
  • 鼻噴霧抗ヒスタミン薬の有効性・安全性
  • 鼻噴霧ステロイド薬と鼻噴霧抗ヒスタミン薬の併用効果
  • 血管収縮薬ってどうなの?
  • OTC医薬品として購入できる主要なアレルギー用点眼薬
  • アレルギー用点眼薬の有効性・安全性
  • 結局のところどうする?

薬の無料アイコン9.png今回出てくるOTCは・・・

【鼻噴霧薬】エージーアレルカットEXc(第一三共ヘルスケア)、パブロン鼻炎アタックJL(大正製薬)、ナザールαAR0.1%(佐藤製薬)、ロートアルガードクリアノーズ(ロート製薬)、コールタイジン点鼻液α(ジョンソン・エンド・ジョンソン)、ナシビンMスプレー(佐藤製薬)、ナザールスプレー(佐藤製薬)、エージーノーズアレルカットC(第一三共ヘルスケア)、パブロン点鼻クイック(大正製薬)、ザジテンAL鼻炎スプレーα(グラクソ・スミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・ジャパン)

【点眼薬】ロートアルガード(ロート製薬)、ロートアルガードクリアブロックZ(ロート製薬)、ザジテンAL(グラクソ・スミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・ジャパン)、ロートアルガードクールEX(ロート製薬)、エージーアイズアレルカットM(第一三共ヘルスケア)、ノアールガード(佐藤製薬)、アイリスAGガード(大正製薬)、眼涼アルファーストEX(久光製薬)、マイティアアルピタットEXα(千寿製薬)


 春の生暖かい風が緩やかに調剤室を吹き抜けていきます。花粉をたっぷり含んだ春風に、薬剤師のあなたは大きなくしゃみを1つ。ちょうどそのとき、カウンターの向こう側から1人の女性客が声をかけてきました。

「今年から花粉症デビューしたんですけど、先日買った飲み薬を飲むと眠くて眠くて……。もう仕事にならないんですよ。眠気は出にくいって、そう言われたんですけどね。確かに症状は抑えられるんですけど、あれじゃもう……。でも、薬がないと1日中、眼は痒いし、くしゃみは止まらないし……」

 飲み薬がダメなら、点鼻薬、もしくは点眼薬。そう考えたあなたは早速、点鼻薬売り場にお客さんを案内します。しかし、売り場にはたくさんの種類の薬が……。とりあえず、目薬から説明した方が早いか、と後ろの目薬陳列棚を振り向くと、これまたたくさんの種類の薬が……。

「えっと、いろいろあるんですけれど……」

――結局のところ何を選んだらよいのでしょう(汗)

薬の無料アイコン9 (1).png鼻噴霧ステロイド薬の効果は侮れない!

 抗ヒスタミン薬の鎮静作用については前回で詳しく論じました。非鎮静性、鎮静性いずれにおいても、薬を飲む人によっては眠気が出ることもありますし、出ないこともあります。

 ランダム化比較試験48研究の統合解析1)では、比較的眠気が出にくいと考えられるレボセチリジンであっても、プラセボに比べて鎮静作用が約1.7倍(相対危険1.67[95%CI 1.17-2.38])有意に大きいという結果でした。さらに、レボセチリジンによる鎮静作用は、非鎮静性抗ヒスタミン薬であるフェキソフェナジン、ロラタジン、ビラスチンとほぼ同程度という結果でした。

 とはいえ前回指摘したのは、こうした鎮静作用が薬の影響のみによるものか、それとも他の要因による影響なのか、厳密な区分は難しいということでした。花粉症の症状そのものの影響やノセボ効果による鎮静作用も軽視できないからです。しかしながら、薬を飲んで眠気が生じたというのは、その人がそう感じる限り事実であって、客観的なデータによって否定されるものでもありません。

 ところで、実際のところ眠気はどのくらいの頻度で起こりうるものなのでしょうか。経口抗ヒスタミン薬と眠気の発現頻度に関しては、長崎県で8~80歳の273人(平均年齢43.7歳)を対象に行われたアンケート調査2)が参考になります。この調査によれば、花粉症の内服薬治療に関して、『飲み薬で眠気を感じましたか?』という質問に回答した189例のうち、“全く感じない”が55%、“少し感じる”が40%、“かなり感じる”が4%という結果でした。

 飲み薬を飲むと、それが薬によるものかはどうあれ眠気が出てしまう。そういう方は少なからず存在します。こうしたケースでは、やはり点鼻薬が考慮できるでしょう。そもそも花粉症治療において、最も有効な薬剤は鼻噴霧ステロイド薬であることは前回お話しました。

 実は鼻噴霧ステロイド薬と抗ヒスタミン薬を併用しても、鼻噴霧ステロイド薬単剤による治療を上回る効果は示されていません。12歳以上の花粉症患者702人を対象に、①モメタゾン200μgとロラタジン10mg併用群(169人)、②モメタゾン200μg単独群(176人)、③ロラタジン10mg単独群181人、④プラセボ群176人―の4群を比較して、鼻症状スコアを検討したランダム化比較試験3)の結果を【図1】に示します。なお、鼻症状スコアは鼻閉、鼻汁、くしゃみ、そう痒感の4項目を、それぞれ0(軽微)~3(重症)の4段階で評価したものの合計点数です。

【図1】鼻噴霧ステロイド薬と経口抗ヒスタミン薬の併用効果

鼻炎用薬点鼻_fig1.png
(参考文献3より筆者作成)

 15日間の治療後、鼻症状スコアは、④と③、④と②、④と①の比較において、それぞれ統計学的にも有意な差を認めましたが、①と②の治療効果に有意な差は認められませんでした。つまり、鼻噴霧ステロイド薬に経口抗ヒスタミン薬の上乗せしても、追加の効果増強はほとんど期待できないということです。これはまた、鼻噴霧ステロイド薬は経口抗ヒスタミン薬に比べて、強力な症状緩和効果を有していることを示唆しています。

 とはいえ、医療機関からの処方においては、両剤が併用されることは少なくありません。こうした、エビデンスと実際の処方行動のギャップは興味深いものがあります。余談ですが、病院に勤務する医師、1,008人を対象にしたスペインでの横断調査4)によれば、花粉症の重症度にかかわらず、医師は経口抗ヒスタミン薬と鼻噴霧ステロイド薬の併用処方を好ましいと考えているようです。治療薬の選択に関して、医師の選好度を10段階で評価した結果、鼻噴霧ステロイド薬単独6.94、経口抗ヒスタミン薬7.25、そして経口抗ヒスタミン薬と鼻噴霧ステロイド薬の併用は7.68という結果でした。

 なお、鼻噴霧ステロイドは花粉症に伴う眼症状にも有効である可能性が報告5~ 7)されており、理論上は、鼻噴霧ステロイド単剤で、十分な症状コントロールが期待できます。

薬の無料アイコン9 (1).png鼻噴霧ステロイドは敬遠される?

 有効性に優れる鼻噴霧ステロイド薬ではありますが、患者さんにとっては敬遠される傾向にあるようです。その要因として、経口薬に比べて手軽に服用できないことや、効果発現時間が遅い、あるいは使用感が悪いことなどが挙げられます。

 米国でアレルギー性鼻炎患者を対象に行われた調査8)によれば、点鼻ステロイド薬を中止した理由として、効果に関連するものが22.4%、デバイスに関連するものが19.0%だったのに対して、薬剤の使用感に関連した中止理由が約47.3%と最多でした【表1】。また、“24時間以内に症状が緩和しない”、“症状をすぐに軽減しない”が、それぞれ回答者の1割を占めており、有効性が高いといっても、効果発現時間がやや遅いことは、服薬アドヒアランスの低下につながる大きな要因となるでしょう。

【表1】鼻噴霧ステロイドを中止する理由

鼻炎用薬点鼻tab01.png

(参考文献8より筆者作成)

 処方薬やOTC医薬品の売り上げについて検討したオーストラリアの研究9)では、鼻噴霧ステロイド薬よりも、経口抗ヒスタミン薬を買い求める人が多いことが示されています。この研究では、薬局データベースを用いて年間の鼻炎治療に対する処方数とOTC医薬品の売り上げ総数4,247,193件を解析していますが、経口抗ヒスタミン薬は3,222,798件 (75.9%)で、このうちOTC購入は2,995,056件でした。他方で、 鼻噴霧ステロイド薬は704,038件 (16.6%)で、このうちOTC購入は456,639件でした。

 同様の傾向は日本人においても認められます。さきほど紹介した長崎県の調査2)によれば、「点鼻薬と内服薬の鼻症状に対する効果が同じだとしたら、どちらを希望して使用しますか?」という質問に回答した243人のうち、“錠剤のみ”が61%だったのに対して、“鼻スプレー”は12%でした。残りの27%は、“どちらでも良い”と回答していました。またこの調査では、内服薬を選ぶ理由として、“使いやすい” が最多で、点鼻薬を拒否する理由としては“面倒である”、“苦手である”などが挙げられています。他方で、点鼻薬を選ぶ理由としては“副作用が少ない”が最多という結果でした。

薬の無料アイコン9 (1).png市販で購入できる主な点鼻薬

 敬遠されがちな鼻噴霧ステロイド薬ではありますが、経口抗ヒスタミン薬で眠気などの作用が出てしまった人では、有効性の観点からも、まずは鼻噴霧ステロイド薬の使用を考慮したいところです。市販で購入できる主な点鼻薬を【表2】に示します。

【表2】市販で購入できる主な抗アレルギー点鼻薬

鼻炎用薬点鼻tab02.png

(筆者作成)

 

 

薬の無料アイコン9 (1).png鼻噴霧ステロイドの有効性・安全性

 OTC医薬品として購入できる鼻噴霧ステロイド薬はベクロメタゾンプロピオン酸エステル製剤およびフルニソリドです。

 ベクロメタゾンプロピオン酸エステル点鼻薬の有効性について、通年性アレルギー性鼻炎患者183人を対象としたランダム化比較試験10)では、くしゃみ、鼻汁、鼻閉は、それぞれプラセボ群と比較して34%、44%、63%、統計学的にも有意に低下させることが示されています。また、季節性アレルギー性鼻炎患者438人を対象とした二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験11)でも鼻症状に対する同薬の有効性が示されており、花粉症治療におけるベースの薬剤として、積極的にお勧めできるものと考えられます。

 ただし、添付文書上、高血圧、真菌症、結核性疾患、喘息、緑内障、反復性鼻出血、感染症の診断を受けた人では同薬の使用が禁止されています。また、「18歳未満には使用しないこと」、そして「1年間に3カ月間を超えて使用しない」という制限があり、販売時には注意が必要です。

 フルニソリド点鼻薬の有効性はベクロメタゾンプロピオン酸エステル点鼻薬とほぼ同等12, 13)であると考えられますが、その使用期間に関して「1年間に1カ月を超えて使用しない」という制限があります。花粉症症状に対するベースの治療としては、やはり3カ月程度の使用が予測されるため、フルニソリド点鼻薬はやや使い勝手が悪いように思います。

 ステロイドというと、やはり副作用を懸念する方も多いかもしれません。やはり長期漫然使用に伴う副腎機能低下(副腎不全)は気になるところでしょう。実際、ステロイド点鼻薬の過剰使用により副腎機能不全やクッシング症候群を発症したとの報告もあります14,15)

 OTC医薬品として販売されているベクロメタゾン点鼻液は1日2回投与が基本的な用量に設定されており、これは医療用のベクロメタゾン点鼻薬の半量となっています。したがって基本的な用量用法を遵守している限り、副腎抑制のリスクは低いと考えられます。しかしながら、コールタイジン点鼻液など他のステロイド含有製剤と長期間併用したり、最大用量である1日4回投与で3カ月を超えて使用された場合などでは、副腎機能低下リスクが高まると考えられ、過剰使用状態に至らないよう注意する必要があります。

 その他の副作用として、眼圧上昇や緑内障、骨密度の低下などが挙げられます。19人と小規模のランダム化比較試験16)ではありますが、高眼圧症または原発性開放隅角緑内障患者に対するベクロメタゾン点鼻薬はプラセボと比較しても眼圧上昇を来しませんでした。また、ベクロメタゾン点鼻薬を標準的な用量で使用している限り、骨粗鬆症を引き起こす可能性はかなり低いと考えられます17)

 他方で、ランダム化比較試験72研究のメタ解析18)によれば、鼻噴霧ステロイド薬の使用で鼻出血リスクの増加が示されています(相対危険 1.48[95%CI 1.32-1.67])。鼻噴霧ステロイド薬の使用で鼻出血を来したケースでは、後述する鼻噴霧抗ヒスタミン薬への切り替えを検討します。

まだまだある花粉症薬、鼻噴霧抗ヒスタミン薬や目薬は次のページで解説。花粉用薬の併用の効果は?

花粉症の飲み薬についてはこちら

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