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転院を決めた患者のサポートは薬剤師の役目

 在宅患者さんのお役に立ちたくて、在宅専門薬局を立ち上げたのが2009年11月。1人薬剤師 兼 ケアマネとして奔走し、在宅活動を通して地域のさまざまな人との繋がりを作ってきました。現在は「街角相談薬局」という立ち位置で頑張っています!

※在宅専門薬局としての活動記はコチラ【まだまだつぼみだけど・・・

つぼみ薬局 角山美穂

 

初来局で介護保険申請の相談をされたご夫婦

 3年前、70代の男性が奥さんの処方箋を持って初来局しました。「妻が玄関先で転倒し、自転車で通院できなくなったので、近隣の病院に転院した」とのこと。「介護用ベッドは購入したが、車イスをレンタルしたいので、介護保険を申請したい」と相談を受けました。

 そのころ、つぼみ薬局は『居宅介護支援事業所』としての運営休止を検討していました。この患者さんについては、役所への介護保険の申請代行まで行いましたが、自分がケアマネとして担当することはしませんでした。ご本人の様子から『要支援者』と思われたので、『地域包括ケアセンター』へ一連のいきさつを含めて依頼の電話をしておきました。

 この際、気になったのが、『車イス』。おせっかいなこの口が、「痛いうちには車イスがいいと思われるかもしれませんが、歩くことが重要だと思う!年齢を重ねると、数日歩かないだけで足の筋肉がすぐに落ちてしまうんです!転倒のリスクを軽減するシルバーカーもありますよ」と持論を展開することは忘れませんでした。

 転倒による怪我は順調に治癒し、数カ月しないうちに一人で来局されるほどに回復しました。ところが、新たな問題が……。昨年末頃から、来局の度に主治医への不信感を口にするようになったのです。眠剤の処方について、本人の思いがうまく伝わらなかったことがきっかけのようでした。

「病院を変わろうと思うんだけど」

 そんな中、左顔面に帯状疱疹ができ、目にも炎症が出てしまう状態に……。この治療のため皮膚科や眼科を受診したことで、主治医との関係がさらに悪化し、ついに「病院を変わろうと思うんだけど」と、ご夫婦で相談にみえました。転院すると、主治医と一から関係を作らなければなりません。現在落ち着いている喘息の症状が、転院によって悪化するリスクもあります。また、子供がいないご夫婦の将来を考えると、療養病床を持つ今の病院は安心です。医師には跡継ぎがいるので、最期まで見てもらえるでしょう。さらに、病院は歩いて5分の距離。したがって、転院はあまりお勧めできないと、できる限りのお話はさせていただきました。

 とりわけ、今回ご相談を受けたのは、高齢の患者さんです。ホームドクターという言葉がありますが、「我が家のことは何でも知っている」という主治医を1人決めておくことは、年齢を重ねる程、重要になると感じています。自宅から遠い病院に転院する高齢者がいますが、最初は自転車や公共交通機関を利用して通院していても、それが難しくなるとまた別の病院へ移る……という繰り返しになるようです。医師と患者との関係も人間関係です。親身になって診てもらおうと思えば、それだけ月日をかけて関係を構築することが必要だと思います。

 しかし、本人の意思は固く、結局は転院の運びになりました。患者さんにはこれまでお預かりしていた血液検査データのコピーを渡し、転院先の病院へは受診前に電話して、主治医との信頼関係が崩れてしまったいきさつを説明しました。

 もちろん、これまでに私の方から転院を勧め、紹介状を作成したことは、何度かあります。例えば、インスリン療法を行っているにもかかわらず、血糖コントロールが悪くHbA1cが10%以上のダブルスコアが続いていた方などがいました。

 しかし、今回の患者さんは高齢でしたし、病院の環境も患者背景によく合っているので、転院する必要性は感じませんでした。患者も医師も人。ちょっとしたボタンの掛け違いから、継続してきた関係が崩れることもあるのだと思い知りました。

 その後もいろいろな患者さんが薬のこと、健康のことなどのご相談にみえます。その都度、その方に適すると思われる地域の社会資源を紹介し、現在の生活を1日でも長く継続できるようお手伝いをしています。『自宅で最期まで自分らしく』という思いで始めたつぼみ薬局ですが、薬局薬剤師の担うべき責任は重いな……と感じた事例のご紹介です。

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【コラムコンセプト】

ケアマネとしても薬剤師としても在宅活動を長く続けてきた筆者が、地域包括ケアの中でどのように薬剤師として貢献していくか、日々のエピソードとともに綴っていきます。

【角山美穂 プロフィール】

2009年11月、「在宅専門薬局」と言う想いでつぼみ薬局を開局。当初は、併設した「つぼみ薬局居宅介護支援事業所」の介護支援専門員として居宅を訪問したり、「つぼみ薬局」の訪問薬剤師として活動。現在は「街角相談薬局」という立ち位置で活動中。

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