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五月病って「適応障害」?

2019年05月28日 10:20

獨協医科大学埼玉医療センター こころの診療科
井原 裕

 今年のゴールデンウィークは、とても長くなりました。そこで気になるのが、休み明けの五月病です。薬剤師として、どのように患者さんに対応したら言いのでしょうか。精神科の医師からメッセージです。

seihinka_1905.jpgIllustration:kazuto hashimoto

 毎年、5月には「五月病」と呼ばれるメンタル不調が流行します。特に今年は、例年以上に患者が多かったのではないでしょうか 。薬剤師の皆さんの場合、高齢の患者さんと接する機会も多いでしょうから、「高齢者も五月病になるのか?」と不思議な気持ちを抱いたかもしれません。実際、今回の5月の体調不良は、幅広い年齢層に見られたことでしょう。

 五月病といえば若い新入生、新入社員などの問題と捉えられがちです。そして、決まって心理的に解釈されます。やれ「新しい環境に適応できない」、やれ「適応の努力も1カ月を過ぎて、ついに力尽きる」など。でもこういう解釈は、どれもしっくりきません。それに高齢者の場合、適応すべき学校も職場もないケースがほとんどです。高齢者の五月病は「適応障害」ではありません。翻って、若年者の場合だって、「適応障害」といった純然たる心理的問題として捉えてはいけないはずなのです。

 学校や会社に行けない理由として、朝方の心身の不調があれば、心を探る前に、身体に目を向けるべきです。そうすることで初めて、五月病の本質が分かってきます。五月病は、決まってゴールデンウィーク明けに発生します。連休中の生活習慣の変化が、身体に決定的な影響をもたらします。特に今年は、天皇退位、新天皇即位もあって、10連休の長い休みとなりました。当然、生活パターンに例年以上の大きな乱れが生じたはずです。若年者の場合、連休中に連日、「宵っ張りの朝寝坊」を続け、起床・就床パターンが通常より3~4時間遅くなりがちです。そして、連休明けに一気に戻そうとすれば、当然「時差ぼけ」が生じ、自律神経失調症状を呈するのです。

 高齢者の場合、原因は自律神経の失調以上に、運動不足の方が大きいでしょう。1日中ゴロゴロしたまま連休を過ごしていなかったか、ぜひ尋ねてみてください。もしかすると、通っているデイサービスも、この連休中は休みになっていたかもしれません。そうであれば、これまでは2~3日に1回必ず体操をしたり散歩したりする機会があったのが、10日間なくなったことになります。高齢者の筋は使わないことによる萎縮も早いですから、10日間の不活発な生活が心身の衰えをもたらした可能性もあります。

 対策は難しくありません。連休前の生活パターンに戻すことです。日中は離床して、散歩や買い物などの日課をこなし、デイサービスに通っていた人は、その習慣を再開する。速やかに通常の生活を取り戻すよう、ご助言をお願いします。日常生活を淡々と繰り返すこと、それに勝るリハビリはないのです。

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