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薬剤師が押さえておきたい健康トピックス(2019年5月)

Fizz-DI 児島悠史

2019年06月03日 13:00

2019年5月1日~31日に各メディアで配信された健康情報のうち、「コレは押さえておきたい!」と考えたものを、独断と偏見でリストアップします。患者さんからの突然の質問に困らないよう、情報収集の一手として役立てていただけると幸いです。

日焼け止めの化学物質は体内に吸収され、血液中に流れ込んでいた:米当局の臨床試験から明らかに

https://wired.jp/2019/05/08/sunscreen-chemicals-soak-all-the-way-into-your-bloodstream/

【WIRED 5月8日】

一部の日焼け止めの成分が皮膚から吸収され、その血中濃度が基準値以上になることが、臨床試験により明らかになりました。この報告は、個人が日焼け止めの使用を控えることを推奨しているのではなく、成分の全身吸収が0.5mLを上回るか安全性に懸念がある製品は、毒性試験をきちんと受けるべきと警鐘を鳴らしています。しかし、一般向けの媒体に取り上げられたことで、日焼け止めの使用を極端に怖がってしまう人が出てくる可能性もあります。強い紫外線を無防備に浴び続けることはより大きなリスクを伴いますので、日焼け止めの使用を中止するのではなく、日常生活と屋外でのレジャー活動とで使い分けるなど、適切な選択が重要です。


(参考)

◆原著の論文
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31058986

  • 対象:24人の健康なボランティア(平均35.5歳)
  • 介入:1cm2あたり2mgの日焼け止めを、体表面積の75%に1日4回4日間塗布
  • 結果:日焼け止めの最大用量での使用により、成分の全身吸収量が0.5ng/mLを上回ることがあった。FDAでは、全身吸収量が0.5 ng/mL以上であれば、非臨床毒性評価試験を受けるべきと定めている。

◆日本化粧品工業連合会が定める基準

  • PA(Protection Grade of UV-A):UV-Aに対する防御指数、「+」の数が多いほど強力
  • SPF(Sun Protection Factor):UV-Bに対する防御指数、「数字」が大きいほど強力

岡山県が子宮頸がんワクチン啓発 有効性やリスク、判断情報を提供

https://www.sanyonews.jp/article/901515

【山陽新聞 5月23日】

:国は子宮頚がんワクチン(HPVワクチン)の積極的な接種の呼び掛けを中止したままの状態ですが、岡山県では今年度から、独自に有効性やリスクについての情報提供を行う事業を始めることが発表されました。この活動は、ワクチン接種の推奨ではなく、県民が判断材料となる有効性やリスクに関する正確な情報に触れる機会を増やし、接種後に体調不良を起こした場合は相談できる医療機関を紹介するなど、判断情報の提供やその後のフォローに重点を置いたものになっています。薬剤師が今後、ワクチンについての質問を受ける機会も増えてくるかもしれません。風評や噂話ではなく、正確な情報提供ができるよう勉強・準備が必要です。


(参考)

◆HPVワクチンの接種と、メディアで報じられた24症状に有意な関連性は認められなかったという日本での調査報告
Papillomavirus Res.5:96-103,(2018) PMID:29481964
→解説記事(HPVワクチン接種によるものとされた"24症状"とHPVワクチン接種には関連性がない

◆HPVワクチンの接種で、子宮頸部上皮内腫瘍が減少(グレード3以上は89%、グレード2は88%、グレード1は79%減)したというスコットランドの調査報告
BMJ.365:l1161,(2019) PMID:30944092

◆HPVワクチンの接種は、男女ともに不妊症のリスクを高めることはないという調査報告
Paediatr Perinat Epidemiol.31(6):531-36,(2017) PMID:28881394

「女性にAED」はセクハラ? 高校生ら対象の調査で男女格差、パッド装着時に抵抗感か

https://news.nifty.com/article/domestic/society/12272-277726/

【@niftyニュース 5月17日】

AED(自動体外式除細動器)は、心室細動に対して電気ショックによる除細動を行う医療機器です。専門的な知識や技術を持たない一般人でも使用が認められており、それによる救命率の向上が期待されています。ところが、SNSではAEDについて誤った情報が拡散されることも多く、今回も「女性への使用は、本人の同意がない限り犯罪になる」といった投稿が物議を醸しました。高校生を対象にした調査では、女性傷病者に対してAEDのパッドを装着することに抵抗感がある男性が多いことも報告されています。しかし、AEDが必要になるときは、基本的に傷病者は意識がない状態で、本人の同意をとることは不可能です。当然、本人の同意なしでもAEDによる救命活動は問題ありません。AEDに関する誤った情報は、一刻を争う現場で救命の結果を左右することにもなりかねないため、正確な情報提供で理解を広めることが大切です。


(参考)

◆「AED、使うべきかどうか迷ったらどうする?~AEDにまつわる3つの誤解」
https://ptweb.jp/article/2017/170831002348/

抗生物質の販売量減少 適正使用啓発の成果か

https://www.47news.jp/medical/shinseiki/3522946.html

【47NEWS 5月7日】

抗生物質(抗菌薬)の使用量が、2018年では2013年に比べて10.7%減少したという調査結果が発表されました。特に、適正使用の啓発が始まった2016年から「セフェム系」や「マクロライド系」・「キノロン系」の使用量が減り、これは主に、風邪などに対する不必要な処方が減った結果と考えられています。国のAMR(薬剤耐性)対策行動計画では、2020年までに上記3系統の抗菌薬使用を50%削減することを目指しています。これに対して薬局薬剤師にできることは少ないと思われがちですが、服薬指導に一言、啓発の情報を添えることから始めてみてはいかがでしょうか。

【コラムコンセプト】
TV・新聞・週刊誌・インターネット......毎日さまざまなメディアから大量の健康情報が配信されます。それを見た患者さんが「こんな情報を見たけれど、私の治療って大丈夫?」と聞いてきたらどうしますか?医療や薬に関する情報は、命に関わるもの。正確さ、専門性が求められます。薬剤師は薬の専門家として、患者さんの持ち込んだ情報が適切かどうかを判断し、対応しなければなりません。このコラムでは毎月、世間を賑わした健康情報をリストアップし、必要に応じて解説します。患者さんからの突然の質問に困らないよう、情報収集の一手として役立てて頂ければ幸いです。

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【児島 悠史氏 プロフィール】
京都薬科大学大学院修了後、薬局薬剤師として活動。「誤解や偏見によって生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、日々の服薬指導のほか、Webサイト「お薬Q&A~Fizz Drug Information」を運営。医学論文などを情報源とした信頼性のある医療情報や、国民の情報リテラシー向上を目的とする記事を配信。近著は、「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100」。

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