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鎮痛薬~どんな頭痛薬がイイですか?- 前編

医療法人社団徳仁会中野病院 青島周一

2019年06月07日 10:00

 患者さんに自信を持ってOTCをおすすめしたい!論文情報や患者さん対応など、薬剤師による薬剤師のためのOTC解説です。

薬の無料アイコン9.png今回のお話「どんな頭痛薬がイイですか?」

  • 危険な頭痛ではないか?
  • 片頭痛の特徴(軽度であればOTC対応可能)
  • 緊張型頭痛(軽度であればOTC対応可能)
  • 薬物乱用頭痛(二次性頭痛:原則的にOTC対応不可)
  • 主な市販薬と含有している鎮痛成分
  • 複数成分が配合されている製剤の方が優れた鎮痛効果?
  • アセトアミノフェンの効果
  • イブプロフェンの効果
  • 結局のところどうする?

薬の無料アイコン9.png今回出てくるOTCは・・・

ロキソニンSプレミアム(第一三共ヘルスケア)/ロキソニンSプラス(第一三共ヘルスケア)/ロキソニンS(第一三共ヘルスケア)/バファリンEX(ライオン)/ロキソプロフェン錠「クニヒロ」(皇漢堂製薬)/イブクイック頭痛薬DX(エスエス製薬)/バファリンプレミアム(ライオン)/ノーシンアイ頭痛薬(アクラス)/ウイルクエストIPa(奥田製薬)/リングルアイビーα200(佐藤製薬)/ナロンメディカル(大正製薬)/タイレノールA(武田コンシューマーヘルスケア)/セデス・ハイ(シオノギヘルスケア)/セデス・ハイG(シオノギヘルスケア)/サリドンWi(第一三共ヘルスケア)/小児用バファリンCⅡ(ライオン)/バファリンルナ(ライオン)/小中学生用ノーシンピュア(アクラス)


 梅雨に入り、天気の悪い日が続いています。鎮痛薬が並ぶ棚を整理していた薬剤師のあなたは、ふと店内を見渡しました。やはり雨の日はお客さんの数も少なく、中央のレジ業務も落ち着いている様子です。そんな中、目の前に1人の女性客が現れました。

 『雨の日は頭が痛くなるんです。一番よく効く痛み止めってどれですか?』

 湿度が高い日はロキソプロフェンの売り上げが上がる、なんて論文1)があったなぁと思いつつ、鎮痛薬の棚にあらためて視線を向けます。確かに種類が多くて、どれを選んでよいか悩んでしまったあなた。一般的にはロキソプロフェンが売れているようだけれど……。

薬の無料アイコン9 (1).png危険な頭痛ではないか?

 頭痛は、国際頭痛分類(第3版)2)に基づき、片頭痛や緊張型頭痛などの一次性頭痛、頭部外傷、頭部血管障害、感染症などの二次性頭痛、そして有痛性脳神経ニューロパチー、他の顔面痛およびその他の頭痛の3つのグループに分けることができます【表1】。

【表1】頭痛の分類

■ 一次性頭痛
◎片頭痛 ◎緊張型頭痛 ◎三叉神経・自律神経性頭痛(TACs)◎その他の一次性頭痛疾患
■ 二次性頭痛(頭蓋内に限らず、頭痛の原因となるなんらかの疾患があって発生する頭痛)
◎頭頸部外傷・傷害による頭痛(例:外傷後頭蓋内血腫)
◎頭頸部血管障害による頭痛(例:くも膜下出血)
◎非血管性頭蓋内疾患による頭痛(例:脳腫瘍)
◎物質またはその離脱による頭痛(例:薬剤の使用過多【薬物乱用頭痛】)
◎感染症による頭痛(例:髄膜炎)
◎ホメオスタシス障害による頭痛(例:高血圧)
◎頭蓋骨、首、眼、耳、鼻、副鼻腔、歯、口あるいはその他の顔面・頸部の構成組織の障害による頭痛あるいは顔面痛(例:顎関節症)
◎精神疾患による頭痛(例:心身症)
■ 有痛性脳神経ニューロパチー、他の顔面痛およびその他の頭痛
◎有痛性脳神経ニューロパチーおよび他の顔面痛 ◎その他の頭痛性疾患

(参考文献2より筆者作成)

 それぞれのグループはサブタイプによってさらに細分化されており、その全てを薬剤師や登録販売者が判別することは困難でしょう。プライマリケア医でさえも、頭痛を適切に鑑別できているのは50%程度だといわれています3)

 OTC医薬品で対応可能なのは、基本的に軽度の一次性頭痛のみです。薬剤師や登録販売者は頭痛を正確に鑑別するというよりも、一次性頭痛と二次性頭痛が明確に区別できるかどうか、つまり目の前のお客さんの頭痛がOTC医薬品で対応可能であるかを判別できることが重要です。『慢性頭痛の診療ガイドライン2013』3)を基に、二次性頭痛を疑うべき症状を【表2】にまとめます。

【表2】二次性頭痛を疑うべき頭痛症状

①突然の頭痛
②今までに経験したことがない頭痛
③いつもと様子が異なる頭痛
④頻度と程度が増していく頭痛
⑤50歳以降に初発の頭痛
⑥神経脱落症状※1を有する患者の頭痛
⑦がんや免疫不全の病態を有する患者の頭痛
⑧精神症状を有する患者の頭痛
⑨発熱、項部硬直※2、髄膜刺激症状※3を有する頭痛

※1 神経の機能が失われることにより発現する失語、麻痺、痙攣、痺れなどの症状
※2 頸部が硬直し、下顎が胸に付かない状態
※3頭蓋骨の内側にある髄膜が感染や出血などにより刺激されて発現する。頸部の痛み、悪心、嘔吐など

(参考文献3より筆者作成)

【表2】に加え、10歳未満の小児における頭痛にも、注意が必要です4)

 突然発症した頭痛では、感染症や他の原因疾患が疑われるので、対応可能な医療機関を受診するよう助言すべきでしょう。インフルエンザ感染症の可能性がある場合、インフルエンザ脳症を発症するリスクを考慮し、アセトアミノフェン以外の鎮痛薬を販売することは避けるべきです。

 また、薬剤服用歴に関する情報は、薬物乱用頭痛、高血圧や精神疾患などに伴う頭痛の可能性を考慮する際に必須となります。さらに、他の医療機関の受診状況も聴取したいところです。例えば、歯科疾患が頭痛の原因となっていることもあります。【表2】に示した症状の有無に加え、医療機関受診歴、薬剤服用歴などを把握した上で、慎重な評価が望まれます。

 薬局やドラックストア店頭において、見逃してはいけない疾患として、髄膜炎くも膜下出血が挙げられます。これらの疾患に伴う頭痛では、救急対応が必要です。

 

■ 髄膜炎

 髄膜炎が疑われる場合、直ちに適切な抗菌薬の投与が必要となるケースもあるので、対応可能な医療機関への迅速な受診を勧めます。

 髄膜炎かどうかを判別する目安として、Jolt accentuationを確認する方法があります。これは「1秒間に2~3回の周期で首を横に振ると頭痛が増悪する」という所見のこと。Jolt accentuationがある場合、髄膜炎の可能性が疑われるというものです5, 6)

 薬局窓口やドラックストア店頭では、こうした所見を観察することが難しい場合もあるでしょう。そんなときは、「頭痛があり、歩くと響く」という訴えが1つの目安になるかもしれません。加えて発熱や嘔気・嘔吐があったり、項部硬直が見られると、髄膜炎の可能性は極めて高くなります。

■ くも膜下出血

 くも膜下出血による頭痛も直ちに対応可能な医療機関への受診が必要です。典型的には、「今までに経験したことのない突然の激しい頭痛」、つまり“人生最悪の頭痛”が見られます。しかし、出血が少量であれば、突然の嘔吐やめまい、視力障害などが発生するものの頭痛は軽度である場合もあります(警告症状)。

 なお、ここでいう突然の頭痛は、具体的には頭痛が始まった瞬間を明確に特定できるような発症の仕方と考えると分かりやすいかもしれません。徐々に頭が痛くなるというものではなく、ニュース番組を見ていたら、「突然激痛に見舞われた」というように、痛みがあるときとないときの境界が鮮明だということです。

 また、頭痛のピークが1時間以内に起こっていて、さらに40歳以上頸部痛あるいは項部硬直目撃者のいる意識消失激しい運動中の発症のいずれかに該当するようであれば、くも膜下出血である可能性は高くなります7)

 少なくとも前記の2疾患については緊急対応できるよう、受け入れ可能な医療機関や対応方法などの手順をあらかじめ整理しておくとよいかもしれません。

 繰り返しとなりますが、OTC医薬品で対応可能な頭痛は、軽度の一次性頭痛であり、基本的には片頭痛や緊張型頭痛のみです。薬局やドラックストア店頭で遭遇頻度が高いと思われる一次性頭痛と、医薬品販売に携わる者として慎重に対応すべき薬物乱用頭痛について、その特徴を整理しましょう。

薬の無料アイコン9 (1).png片頭痛の特徴(軽度であればOTC対応可能)

 典型的な片頭痛発作は、頭の片側(時に両側)に発症する拍動性の痛みで、通常4~72時間持続します。一般的には「ズキズキする」「脈打つような」と表現されることが多いようです。また、階段の昇降など日常的な動作によって頭痛が増強することもあります。吐き気や嘔吐を伴うことが多く、頭痛発作中は感覚過敏となって、普段は気にならないような光、音、においを不快と感じる方が多いようです8)。なお、片頭痛には、キラキラした光やギザギザの光が見える前兆(閃輝暗点)を伴う場合と、伴わない場合があります。

 日本における片頭痛の有病割合は、15歳以上の4,029人を対象とした横断調査9)によると8.4%と報告されています。このうち、前兆のない片頭痛が5.8%、前兆のある片頭痛が2.6%でした。

 さらにこの調査では、片頭痛患者の69.4%が、医師に相談したことがありませんでした。片頭痛を有しながらも医療機関を受診しない人は少なくないようです。そして、片頭痛患者の74.2%が、頭痛によって日々の活動を著しく損なわれているという結果でした。

 また、日本人5,758人を対象とした横断調査10)によれば、片頭痛は男性よりも女性で多い(オッズ比5.9[95%CI 4.5〜8.0])ことが示されています。一般的に片頭痛は思春期の開始ごろに発症することが多く、有病割合のピークは25~55歳ごろです11)。高齢での新規発症はまれであり、高齢者における初発の頭痛は二次性頭痛を考慮する必要があります。片頭痛の主なリスクファクター12)を【表3】にまとめます。

【表3】片頭痛の危険因子

PTC頭痛表3.png

【表3】に示した他、18歳以上の7万2,969人を対象とした症例対照研究13)では、片頭痛と診断された人では、片頭痛ではない人に比べて、ドライアイの有病割合が1.7倍に上ることが示されています(オッズ比1.72[95%CI 1.60~1.85])。片頭痛とドライアイの詳細な因果関係は不明ですが、リスクファクターに関する情報は、片頭痛か二次性頭痛かを見分ける重要な手がかりとなるでしょう。

薬の無料アイコン9 (1).png緊張型頭痛(軽度であればOTC対応可能)

 緊張型頭痛は、一般的に「締め付けられるような……」あるいは「重りを乗せられたような……」と表現される非拍動性の頭痛で、多くは両側性です。持続時間は30分から時に7日にわたることもあります。

 頭痛の程度は軽度~中等度で、頭痛のために日常生活に支障を来すことはあっても寝込んでしまうようなことは多くありません。基本的には、歩行や階段の昇降のような日常的な動作で頭痛が悪化することもなく、嘔気や嘔吐症状もまれです。

 頭痛の世界的な有病割合を調査した文献14)によれば、片頭痛が11%に対して緊張型頭痛は42%と報告されており、一次性頭痛の中でも最も有病者が多い頭痛だといえます。なお、緊張型頭痛におけるリスクファクターを検討した研究は少なく、確立した誘発因子は明らかにされていません3)

薬の無料アイコン9 (1).png群発頭痛(OTC対応不可)

 群発頭痛では、眼周囲から前頭部、あるいは側頭部にかけての激しい頭痛が、数週~数カ月にわたり集中的に発生します。夜間や睡眠中に頭痛発作が起こりやすく、その頻度は2日に1回~1日に8回ほど。1回の発作は、15分~3時間ほど続きます。頭痛発作時には眼の充血や流涙、鼻汁、鼻閉、縮瞳、まぶたが下がってしまう眼瞼下垂などの症状を伴うことがあります。また、頭痛発作中は落ち着かず興奮したような状態になる場合もあり、動けなくなる片頭痛とは対照的です。群発頭痛の発作に通常の鎮痛薬が奏効することはまれであり、OTC医薬品で対応できるような病態ではありません。群発頭痛が疑われるケースでは、対応可能な医療機関の受診が勧められます。

薬の無料アイコン9 (1).png薬物乱用頭痛(二次性頭痛:原則的にOTC対応不可)

 頭痛治療のために鎮痛薬を高頻度に使用している頭痛患者では、頭痛の発症頻度が徐々に増加し、やがて連日のように発生する状態に至ってしまうことがあります。このように薬剤を過剰使用したために生じてしまう頭痛を、薬物乱用頭痛と呼びます。

 通常、乱用している急性期頭痛治療薬を中止すると、頭痛が消失、または元のパターンに改善します。国際頭痛学会では、乱用を、単一成分の鎮痛薬は月に15日以上その他の頭痛薬は月に10日以上の使用が、3カ月以上続いた状態と定義しています。OTC頭痛薬の多くは複数の成分が配合されており、分類上は複合薬物に該当するので、月に10日以上の使用が3カ月続いていると乱用状態になります

 薬物乱用頭痛を発症するまでの期間について、98例を対象とした前向き調査15)によれば、トリプタン系薬剤で1.7年(月平均18回投与)、エルゴタミン製剤で2.7年(同37回投与)、通常の鎮痛薬で4.8年(同114回投与)と報告されています。OTC頭痛薬の使用歴が5年に及ぶような人では、薬物乱用頭痛の可能性を十分に考慮する必要があります。

 薬物乱用頭痛の予防と治療の原則は、①原因薬物の中止 ②薬物中止後に起こる頭痛への対応③予防薬の投与―の3点です。薬局での対応は困難ですから、薬物乱用頭痛が疑われる場合は、できるだけ速やかに医療機関を受診するよう勧奨します。

 なお、日本における薬物乱用頭痛の有病割合は定かではありませんが3)が、海外文献を参照すると、その有病割合は1〜2%で、女性で高い傾向にあり、社会経済的地位が低い女性では全体の7%にも達すると報告されています16)

次のページでは、市販薬の使い分けを解説!

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