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薬剤師が押さえておきたい健康トピックス(2019年6月)

Fizz-DI 児島悠史

2019年07月01日 13:00

2019年6月1日~30日に各メディアで配信された健康情報のうち、「コレは押さえておきたい!」と考えたものを、独断と偏見でリストアップします。患者さんからの突然の質問に困らないよう、情報収集の一手として役立てていただけると幸いです。

子宮頚がんワクチン、14ヶ国の調査で効果明らかに 撲滅の可能性も

https://www.bbc.com/japanese/48795883

【BBC NEWS JAPAN 6月28日】

HPVワクチンの接種が進む先進14カ国で行われた65の報告を解析した結果、ワクチン接種によってウイルス感染や前がん病変(子宮頸部上皮内腫瘍)の発生件数が低下したことが示されました。HPVワクチンから受ける最終的な恩恵は「がんの予防」です。そのため、接種の効果が実際に示されるまでには長い年月がかかるという難点がありますが、ワクチン導入から10年が経過し、実際の病変に関する報告が増えてきています。


(参考)

◆原著の論文
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(19)30298-3/fulltext

  • 16型と18型のHPV感染件数:15~19歳の女性で83%、20~24歳の女性で66%減少
  • 子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)の発症件数:15~19歳の女性で51%、20~24歳の女性で31%減少

88歳の女性が医師の処方通りに大量の薬を飲んで救急搬送

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20190614-OYTET50007/

【ヨミドクター 6月14日】

これまで処方された薬をきちんと服用できていなかった高齢の患者が、家族のサポートによって薬を確実に服用できるようになったところ、低血圧や低血糖などの副作用を起こして救急搬送されたというエピソードが、話題になりました。「処方されている薬」と「実際に服用できている薬」に差がある場合、こうした服薬サポートが裏目に出てしまう可能性があります。薬局で一包化の提案をする際にも十分注意したい点です。

「認知症予防」根拠薄く批判、政府が数値目標取りやめ

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45819510X00C19A6SHA000/

【日本経済新聞 6月8日】

「認知症」患者の増加が社会問題になる中、政府の大綱に「70代で認知症になる人を10年で1割減らす」という数値目標を盛り込む動きがありました。しかし、現在のところ「認知症を予防」できる明確な方法は確立されていないため、この数値目標によって「認知症は予防できる」との誤解が広まると、根拠のない予防法が蔓延する恐れもありました。認知症には薬があるものの、劇的な効果は期待できないとの報告もあります1)。そのため、「認知症にならない方法」よりも、「認知症になっても困らない社会」を目指す方が良いとする声も挙がっています。


(参考)

1) Drugs Aging.32 (6):453-67,(2015) PMID:25941104
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25941104
認知症に対する「コリンエステラーゼ阻害薬」の効果のメタ解析、軽度~中等度で「わずかな改善」は認められたが、薬の効果は経時的に低下し、用量依存的に副作用リスクは高くなるほか、85歳以上では有益でない可能性もある、と結論。

アフターピル(緊急避妊薬)、必要とする女性に、どう届けるべきか

https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5d106185e4b07ae90d9f8b1e

【HUFFPOST 6月24日】

現在、アクセスが非常に限られている「緊急避妊薬」を「処方箋医薬品以外の医薬品」にすることで、処方箋が無くても薬剤師による提供ができるようにしようという署名活動がありました。「緊急避妊薬」は、日常的な避妊に使うべきものではありませんが、望まぬ妊娠を防ぐためには有効な手立てです。賛成・反対を問わず、これを機会に問題について理解を深め、自分は薬剤師としてどう考えるのか、根拠を踏まえた自分なりの意見を持って議論を追っていける薬剤師が増えたらよいなと思います。

【コラムコンセプト】
TV・新聞・週刊誌・インターネット......毎日さまざまなメディアから大量の健康情報が配信されます。それを見た患者さんが「こんな情報を見たけれど、私の治療って大丈夫?」と聞いてきたらどうしますか?医療や薬に関する情報は、命に関わるもの。正確さ、専門性が求められます。薬剤師は薬の専門家として、患者さんの持ち込んだ情報が適切かどうかを判断し、対応しなければなりません。このコラムでは毎月、世間を賑わした健康情報をリストアップし、必要に応じて解説します。患者さんからの突然の質問に困らないよう、情報収集の一手として役立てて頂ければ幸いです。

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【児島 悠史氏 プロフィール】
京都薬科大学大学院修了後、薬局薬剤師として活動。「誤解や偏見によって生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、日々の服薬指導のほか、Webサイト「お薬Q&A~Fizz Drug Information」を運営。医学論文などを情報源とした信頼性のある医療情報や、国民の情報リテラシー向上を目的とする記事を配信。近著は、「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100」。

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