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鎮痒薬~虫刺されにはどんな痒み止めがイイですか?- 後編

医療法人社団徳仁会中野病院 青島周一

2019年07月05日 17:00

 患者さんに自信を持ってOTCをおすすめしたい!論文情報や患者さん対応など、薬剤師による薬剤師のためのOTC解説です。

薬の無料アイコン9.png今回のお話「虫刺されにはどんな痒み止めがイイですか?」

  • 虫刺されによる皮膚炎、どんな虫が原因となる?
  • 市販の虫刺され用外用薬
  • 蚊やダニが媒介する感染症に注意
  • 市販されている忌避剤(虫よけ)
  • 虫刺されの痒み、結局のところどうする?

薬の無料アイコン9.png今回出てくるOTCは・・・

リビメックスコーワ クリーム(興和製薬)/リビメックスコーワ 軟膏(興和製薬)/リビメックスコーワ ローション(興和製薬)/フルコートf(田辺三菱製薬)/オイラックスA(第一三共ヘルスケア)/ベトネベートN軟膏AS(第一三共ヘルスケア)/ベトネベートクリームS(第一三共ヘルスケア)/ムヒアルファEX(池田模範堂)/液体ムヒアルファEX(池田模範堂)/液体ムヒアルファS2a(池田模範堂)/ムヒS(池田模範堂)/ムヒアルファSⅡ(池田模範堂)/新ウナコーワクール(興和製薬)/ウナコーワクールパンチ(興和製薬)/レスタミンコーワ軟膏(興和製薬)

薬の無料アイコン9.png今回出てくる商品(忌避剤)は・・・

スキンガードアクア(ジョンソン)/スキンガード(ジョンソン)/スキンベープミスト(フマキラー)/サラテクト(アース製薬)/サラテクトリッチリッチ30(アース製薬)/医薬品スキンベーププレミアム(フマキラー)/天使のスキンベープ(フマキラー)/お肌の虫よけプレシャワーDF(キンチョー)/天使のスキンベーププレミアム(フマキラー)/お肌の虫よけプレシャワーDF PRO(キンチョー)


薬の無料アイコン9 (1).png蚊やダニが媒介する感染症に注意

 蚊による皮膚の痒みが重症化することはまれですが、注意すべきなのは蚊が媒介する感染症です。コガタアカイエカが媒介する日本脳炎は有名ですが、ワクチンの接種により罹患リスクを大幅に低減させることが可能です。臨床上問題となる主な蚊媒介感染症として、デング熱チクングニア熱ジカウイルス感染症が挙げられますが、いずれも発熱と全身の発疹を特徴とし、ヤブ蚊属によって媒介される感染症です。

 わが国においては主に海外からの輸入感染症として発生が見られましたが、デング熱に関しては 2014 年に国内感染例が報告されました。これらの蚊媒介感染症に関しては、国内において有効なワクチンが存在せず、予防には蚊に刺されないようにする防蚊対策が重要です1)

 また、感染症を媒介する生物としてダニにも注意が必要です。ダニが媒介する主な疾患としては、マダニによる日本紅斑熱ライム病回帰熱重症熱性血小板減少症候群(SFTS)や、ツツガムシによるツツガムシ病が挙げられます。SFTSは2011年に、中国において新しい感染症として流行していることが報告された疾患です。主な初期症状は発熱、全身倦怠感、消化器症状であり、重症化すると死亡に至ることもあります。国内では2013年1月にSFTS患者が初めて確認されて以降、毎年60~90人前後の患者が報告されています26)

 マダニ類の多くは、人や動物に取り付くと、皮膚に口器を突き刺し、長時間(数日から、長いものは10日間以上)吸血しますが、かまれたことに気が付かない場合も多いといわれています。吸血中のダニに気が付いた際、無理に引き抜こうとすると虫体の一部が皮膚内に残って化膿したり、マダニの体液が逆流してしまったりする恐れがあるので、医療機関で適切な処置(ダニの除去、洗浄など)を受ける必要があります。また、ダニに咬まれた後、数週間程度は体調の変化に注意し、発熱などの症状が認められた場合は医療機関の受診が勧められます。

薬の無料アイコン9 (1).png市販されている忌避剤(虫よけ)

 市販されており忌避剤には、 DEET(ディート:N,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド)とイカリジン(ピカリジン)の2種類があります。DEETは米国陸軍が開発したもので、安価に製造できることから世界的に普及しました。市販されているDEET含有の忌避剤は5~30%のものがありますが、DEETを12%以上含有する製品は第2類医薬品となっています。

 DEETの含有濃度は有効性や効果持続時間と関連しています27)。蚊に対する効果は20%以上の濃度のDEETが最も有効な効果を示したと報告28)されていますが、小児においては安全性29)の観点から6カ月未満には使用しない、6カ月から2歳では1日1回、2歳から12歳では1日3回という使用回数制限や、顔には使用しないなど適用部位の制限が設けられています30)

 イカリジンは、1980年代にドイツで開発された虫よけ成分で、現在では欧州、米国、オーストラリアなどさまざまな地域で製品化されています。日本では、2015年に製造販売承認を取得しました。イカリジンはDEETと同等の忌避作用を有しますが、毒性が少なく作用が長時間持続するという利点があります31) 。そのため、小児に対する使用制限はありません。

【表4】市販で購入できる主な忌避剤
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(著者作成)

薬の無料アイコン9 (1).png虫刺されの痒み、結局のところどうする?

【表2】に示した医療機関受診が推奨されるような症状が認められず、皮膚炎が広範囲に及んでいない場合では、ステロイドを含有した外用薬を短期的に使用することが最も効果的だと考えられます。ステロイド使用に不安がある場合では、ステロイドを含有していない薬でもよいですが、毛虫による皮膚炎など、夜も眠れないほど強い瘙痒感があるケースでは、抗ヒスタミン薬外用で症状をコントロールするのは難しいかもしれません。ストロングクラスのステロイドを含有した薬剤を用いるか、状態に応じて医療機関の受診を勧めましょう。

 L-メントール配合の有無については使用感の好みで選択すればよいですが、クロタミトンについては、有効性・安全性の観点から積極的に勧める根拠に乏しいと感じられます。また、抗菌薬の含有された外用薬もありますが、こうした抗菌薬の予防的な投与で皮膚感染症を防げるかどうかは不明です。抗菌薬適正使用の観点からも勧めるべきではないかもしれません。

 以上を踏まえると、液体ムヒアルファEX液体ムヒS2aは、虫刺症に対する有効性・安全性のバランスに優れた薬剤といえそうです。L-メントールの刺激が苦手な人ではリビメックスコーワ軟膏・クリーム・ローションあるいはベトネベートクリームS、ステロイドを使いたくない人ではレスタミンコーワ軟膏ムヒSウナコーワクールパンチ新ウナコーワクールなどが勧められるでしょう。

 また、虫刺症を予防し、蚊やダニが媒介する感染症から身を守るためにも、機会があれば以下の点に注意を促したいところです【表5】。

【表5】蚊やダニ媒介感染症予防のための注意点

  • ・できるだけ草むらに入らない。
  • ・蚊が多く生息していそうな場所(水辺や小さな水たまり)を避ける
  • ・野山に行くときは長袖、長ズボンなどを着用しできるだけ肌を露出しない。
  • ・草の上に直接座ったり、寝転んだりしない。敷物を利用する。
  • ・脱いだ上着やタオルは、不用意に地面や草の上に置かない。
  • ・忌避剤を使用する。
  • ・帰宅後はすぐに入浴し、着替える。

 忌避剤については、イカリジン含有製剤が入手できる現在、DEET含有製剤を積極的に使うべき理由は少ないと思います。特に小児では使用回数制限からDEET含有製剤では十分な虫よけ効果を得られない可能性もあり、イカリジン製剤が勧められます。

 薬ビンのアイコン素材.png

【参考文献/脚注】
1) 国立感染症研究所 蚊媒介感染症診療ガイドライン5版 
2) Dokkyo journal of medical sciences 41(3), 295-306, 2014-10-25.NII論文ID(NAID)110009857925
3) Dtsch Arztebl Int. 2012 Mar;109(13):238-248.PMID: 22532821
4) わが国における蜂刺症 IASR特集 The Topic of This Month Vol.18 No.8(No.210)
5) 日本農村医学会雑誌. 1993 年 42 巻 4 号 p. 949-955. DOI: 10.2185/jjrm.42.949
6) 皮膚の科学. 2005 年 4 巻 6 号 p.527-531.DOI: 10.11340/skinresearch.4.6_527
7) 皮膚の科学. 2004 年 3 巻 6 号 p.541-545.DOI: 10.11340/skinresearch.3.6_541
8) American Academy of Dermatology. Bug bites and stings: When to see a doctor
9) J Allergy Clin Immunol. 2004 Nov;114(5):1189-1194 PMID: 15536430
10) Dermatol Clin. 1990 Apr;8(2):245-52. PMID: 2191798
11) Clin Exp Allergy. 1991 Sep;21(5):617-622. PMID: 1683811
12) Skin Pharmacol. 1989;2(1):38-40. PMID: 2576379
13) Clin Exp Allergy. 1993 Jan;23(1):72-75. PMID: 8094995
14) Acta Derm Venereol. 2000 Mar-Apr;80(2):114-116. PMID: 10877131
15) Acta Derm Venereol. 1997 Jul;77(4):315-316. PMID: 9228228
16) Allergy. 2000 Jul;55(7):668-671.PMID: 10921468
17)皮膚. 1987 年 29 巻 2 号 p. 310-317 DOI: 10.11340/skinresearch1959.29.310
18)皮膚. 1987 年 29 巻 3 号 p. 663-670 DOI: 10.11340/skinresearch1959.29.663
19)皮膚. 1983 年 25 巻 3 号 p. 486-492 DOI: 10.11340/skinresearch1959.25.486
20)皮膚. 1983 年 25 巻 2 号 p. 270-278 DOI: 10.11340/skinresearch1959.25.270
21) Drug Ther Bull. 2012 Apr;50(4):45-48. PMID: 22495051
22) 応用薬理 77(3), 87-93, 2009-10-30 NII論文ID(NAID) 10028212050
23) PAIN RESEARCH. 2018 年 33 巻 1 号 p. 47-57 DOI: 10.11154/pain.33.47
24)皮膚. 1998 年 40 巻 4 号 p. 345-350 DOI: 10.11340/skinresearch1959.40.345
25)皮膚. 1985 年 27 巻 4 号 p. 781-786 DOI: 10.11340/skinresearch1959.27.781
26)厚生労働省 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A 
27) CMAJ. 2003 Aug 5;169(3):209-12.PMID: 12900480
28) Travel Med Infect Dis. 2013 Nov-Dec;11(6):374-411.PMID: 24201040
29) J Toxicol Environ Health A. 2004 Feb 27;67(4):331-356. PMID: 14713564
30) 厚生労働省 ディートを含有する医薬品及び医薬部外品に関する安全対策について 
31) Int J Pharm. 2018 Mar 25;539(1-2):190-209. PMID: 29410208
32)日本内科学会雑誌. 2017 年 106 巻 3 号p.444-450. DOI:10.2169/naika.106.444

薬剤師、登録販売者のためのOTC連載です。OTC医薬品に対する考え方、使い方について「実践的」に整理します。筆者のドラックストアでのバイト経験と、具体的な薬剤エビデンスに基づき、実際の患者にどうアプローチしていけばよいのか、ピットフォールなどを交えて解説していきます。

【プロフィール】
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保険薬局勤務を経て、現在は病院薬剤師。NPO法人AHEADMAP共同代表。
普段は論文を読みながら医師に対して処方提案などを行っていますが、薬剤師によるEBMの実践とその普及に関する活動もしています。

公式ブログ:思想的、疫学的、医療について
Twitter:@syuichiao89

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