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薬剤師が押さえておきたい健康トピックス(2019年8月)

Fizz-DI 児島悠史

2019年09月04日 10:00

 2019年8月1日~31日に各メディアで配信された健康情報のうち、「コレは押さえておきたい!」と考えたものを、独断と偏見でリストアップします。患者さんからの突然の質問に困らないよう、情報収集の一手として役立てていただけると幸いです。

ピボキシル基含有抗菌薬の服用に関連した低カルニチン血症に係る注意喚起について

https://www.jpeds.or.jp/modules/news/index.php?content_id=503

【日本小児科学会 8月20日】

 「ピボキシル基」は、一部の抗菌薬の消化管吸収を改善する目的で付加されていますが、代謝に「カルニチン」を消費するため、ごく短期間の使用でも低カルニチン血症(症状:低血糖・痙攣など)を起こすことがあります。低カルニチン血症は特に乳幼児で起こりやすいですが、成人でも報告があり油断はできません。リスクを知らないまま薬を使うのは危険ですので、まずは周知徹底が必要です。

201908図1.png

(参考)

◆「ピボキシル基を有する抗菌薬投与による、小児等の重篤な低カルニチン血症と低血糖について」(PMDAからの医薬品適正使用のお願い No.8 2012年4月)
https://www.pmda.go.jp/files/000143929.pdf

◆「セフカペン ピボキシル」を服用した85歳男性に低カルニチン血症に伴う低血糖が現れた症例
Intern Med. 2019 Jun 27. doi: 10.2169/internalmedicine.2339-18. [Epub ahead of print]
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31243204

◆「ピボキシル基」を持つ抗菌薬で低血糖が起こるのは何故?~カルニチンと脂肪酸β酸化
(お薬Q&A)https://www.fizz-di.jp/archives/1072533338.html

花粉症薬、保険適用外に=医療費600億円削減-健保連提言

【時事ドットコムニュース 8月23日】

https://www.jiji.com/jc/article?k=2019082200648

 市販薬と同じ成分の花粉症治療薬について、医療保険を外して全額自己負担にすると、年間600億円程度の医療費削減効果が得られるとの試算がなされました。確かに、花粉症と紛らわしい症状で「緊急性が高く重篤な疾患」は少なく、「抗ヒスタミン薬」のラインナップは市販薬でも充実しているため、花粉症のセルフメディケーションを推進することは理に適っていると思います。

 しかし、「抗ヒスタミン薬」については、「市販薬もある薬」が「市販薬のない薬」に大きく劣っているわけではなく、眠気が出にくい薬や妊娠・授乳中でも安全性評価が高い薬(例:ロラタジン、フェキソフェナジン)など、使い勝手のよいものが多いのも事実です。経済効果だけに注目するのではなく、「どのような薬が市販されているのか」も踏まえた議論が必要です。


(参考)

◆第二世代の抗ヒスタミン薬の市販状況
※市販薬があるもの:ロラタジン、フェキソフェナジン、セチリジン、エバスチン、エピナスチン、メキタジン、アゼラスチン、ケトチフェン
※市販薬がないもの:オロパタジン、ベポタスチン、エメダスチン、レボセチリジン、ビラスチン、デスロラタジン、ルパタジン

鎮痛剤「オピオイド」で5万人死亡 約600億円の賠償命令

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190827/k10012050051000.html

【NHK NEWS WEB 8月27日】

「オピオイド」が死者を大幅に増やしているかのようなタイトルで公開されましたが、正しくは、「オピオイド」の乱用・不適切使用によって死者が出ていることについて、適正使用の啓発や危険性の警告が十分でなかったとして、米・オクラホマ州の裁判所からジョンソン・アンド・ジョンソン社に対して賠償命令が出ているものです。「オピオイド」は正しく使えば怖い薬ではありません。こうした「オピオイド=危険」という誤解を助長するような報道は、患者の服薬状況を悪化させ、病状や健康状態に悪い影響を及ぼす可能性もあります。医療について何らかの報道があった際には、注意して情報を精査する必要があります。

エボラウイルス検出されず コンゴから帰国の高熱女性

https://this.kiji.is/530642428013921377

【共同通信 8月4日】

「エボラ出血熱」は致死率が高いウイルス性の出血熱で、しばしば大流行してニュースになります。しかし、ヒトからヒトへの感染経路は血結核や麻疹(はしか)など。液や体液を介したもので、麻疹(はしか)のような空気感染や、インフルエンザのような飛沫感染をすることはありません。感染症の予防には感染経路を封じることが大切ですが、病原体によってその感染経路はさまざまです。SNSなどで間違った情報が流れると、パニックの原因になることもあります。なじみのない感染症について流行の可能性が公表された場合には、過剰な反応をせず適切な対応をするよう呼び掛けることが大切です。


(参考)

◆国立感染症研究所「エボラ出血熱」とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/342-ebola-intro.html
・飛沫感染:インフルエンザや風邪などのように、咳やくしゃみで飛び散った飛沫によって感染が起こること。
・空気感染:結核や麻疹(はしか)などのように、空気中の微粒子によって感染が起こること。「飛沫核感染」ともいう。

  

【コラムコンセプト】
TV・新聞・週刊誌・インターネット......毎日さまざまなメディアから大量の健康情報が配信されます。それを見た患者さんが「こんな情報を見たけれど、私の治療って大丈夫?」と聞いてきたらどうしますか?医療や薬に関する情報は、命に関わるもの。正確さ、専門性が求められます。薬剤師は薬の専門家として、患者さんの持ち込んだ情報が適切かどうかを判断し、対応しなければなりません。このコラムでは毎月、世間を賑わした健康情報をリストアップし、必要に応じて解説します。患者さんからの突然の質問に困らないよう、情報収集の一手として役立てて頂ければ幸いです。

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【児島 悠史氏 プロフィール】
京都薬科大学大学院修了後、薬局薬剤師として活動。「誤解や偏見によって生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、日々の服薬指導のほか、Webサイト「お薬Q&A~Fizz Drug Information」を運営。医学論文などを情報源とした信頼性のある医療情報や、国民の情報リテラシー向上を目的とする記事を配信。近著は、「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100」。

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