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口内炎治療薬~口内炎ができたのですが、どんな薬がイイですか?- 後編

医療法人社団徳仁会中野病院 青島周一

2019年10月25日 17:00

 患者さんに自信を持ってOTCをおすすめしたい!論文情報や患者さん対応など、薬剤師による薬剤師のためのOTC解説です。

薬の無料アイコン9.png今回のお話「口内炎ができたのですが、どんな薬がイイですか?」

  • 口内炎の症状、注意すべきことは?
  • 特に注意が必要な口内炎
  • アフタ性口内炎の有病割合
  • 特に注意が必要な口内炎
  • 市販で購入できる主な口内炎治療薬
  • 結局のところどうしますか?

薬の無料アイコン9.png今回出てくるOTCは・・・

アフタッチA(佐藤製薬)/口内炎パッチ大正クイックケア(大正新薬)/トラフルダイレクト(第一三共ヘルスケア)アフタガード(佐藤製薬)/口内炎軟膏大正クイックケア(大正製薬)/トラフル軟膏PROクイック(第一三共ヘルスケア)/口内炎パッチ大正(大正製薬)/サトウ口内軟膏(佐藤製薬)/トラフル軟膏(第一三共ヘルスケア)/新デスパコーワ(興和)/口内炎軟膏大正A(大正製薬)/トラフル錠(第一三共ヘルスケア)


薬の無料アイコン9 (1).png市販で購入できる主な口内炎治療薬

 市販で購入できる主なOTC口内炎治療薬を【表3】にまとめます。

【表3】市販で購入できる主な口内炎治療薬 

OTC口内炎図3.png

(筆者作成)

 市販で購入できる主な口内炎治療薬を【表3】にまとめます。アフタ性口内炎に対する局所ステロイドは、プラセボと比べ、潰瘍の治癒期間を短縮することが知られています16~18)。カタル性口内炎や感染症に伴う口内炎でなければ、トリアムシノロンアセトニド含有製剤は優先的に考慮できる薬剤です。

 アフタ性口内炎の疼痛症状に対し、ビタミンB1219やビタミンC20の有効性が示された研究も報告されていますが、口内炎予防に対するマルチビタミン製剤の有効性は示されていません21)。症状緩和には若干の効果が期待できるかもしれませんが、予防的にビタミン剤の服用を推奨する根拠には乏しいです。

 抗炎症作用を有するトラネキサム酸やアズレンは、口内炎症状の緩和に効果が期待できそうな薬剤ですが、その有効性を裏付ける質の高い研究報告を見つけることはできませんでした。トラネキサム酸に限らず、口内炎に対する内服治療の効果はあまり明確ではありません22)。漢方薬は有効性を示唆する報告はあるものの、研究手法上の問題など、妥当性の高い知見は得られていません23)

 一般的にステロイドは感染症の発症リスクを高めるので、軽度のカタル性口内炎や感染が疑われる口内炎においては、ステロイドを含有しない外用製剤を考慮できるかもしれません。とはいえ、これら外用製剤に関して、質の高い研究報告は限定的です。セチルピリジニウムは口臭や口腔内衛生の改善に効果が期待できるかもしれません24)が、口内炎症状に対する効果に関する研究報告はないようです。医薬品以外では、アロエベラ(アロエ属の多肉植物)ゲル、プロポリス、n-3系不飽和脂肪酸などの有効性が示唆されています。

 アロエベラゲルの有効性について、アフタ性口内炎を有する40例を対象とした二重盲検ランダム化比較試験25)が報告されています。アロエベラゲルを塗布する群(アロエベラゲル群)20例、プラセボを塗布する群(プラセボ群)20例を対象に治癒期間や疼痛の度合い、炎症の直径などを比較したところ、プラセボ群と比べてアロエベラゲル群で治癒期間、疼痛の度合い、炎症部位の直径、いずれも有意に優れていたということです。

 プロポリスの有効性は、アフタ性口内炎を有する19例を対象とした二重盲検ランダム化比較試験26)で示唆されています。プロポリス500mgを摂取する群(プロポリス群)10例と、プラセボを摂取する群(プラセボ群)9例に割り付け、口内炎の発生頻度が比較されました。その結果、プロポリス群でプラセボ群に比べて発生が有意に少なく、生活の質(QOL)も高かったという結果でした。

 n-3系不飽和脂肪酸の有効性については、アフタ性口内炎を有する50例を対象とした二重盲検ランダム化比較試験27)が報告されています。n-3系不飽和脂肪酸1,000mg摂取群(n-3系不飽和脂肪酸群)25例とプラセボを摂取する群(プラセボ群)25例における疼痛の度合いや潰瘍の大きさが比較されています。その結果、プラセボ群と比較してn-3系不飽和脂肪酸群では疼痛が有意に減少し、潰瘍の大きさも有意に縮小したと報告されています。

薬の無料アイコン9 (1).png結局のところどうしますか?

 小アフタ型の口内炎であれば、トリアムシノロンアセトニド含有製剤を優先的に考慮できるでしょう。5歳未満の小児では口腔内パッチが使用できませんので、軟膏製剤を選択します。外傷や感染リスクが想定される場合では、ステロイドを含有しない製剤を勧めるとよいでしょう。

 生活習慣の見直しとしては、口腔内の衛生管理、堅い食べ物、ナッツ類、チョコレート、炭酸飲料、柑橘類、トマト、からい食品(唐辛子、カレー)、飲酒などを避けることが考えられます3)。ただ、アフタ性口内炎の発症機序は極めて多因子的なので、特定の生活習慣に配慮しても、口内炎の治癒の促進や、再発予防に明確な効果があるかは不明です。

 口内炎治療に医薬品ではなくサプリメントを使いたいという場合には、再発予防にプロポリス、治癒促進にn-3系不飽和脂肪酸を考慮できるかもしれません。ただ、有効性を示唆したいずれの試験も小規模なものであり、結果の妥当性は決して高くはありません。偶然的に有意な差が示された可能性も踏まえると、これらサプリメントが必ずしも口内炎に有効とは結論できない悩ましさがあります。

 予防も含めて、口内炎対策の基本はバランスの良い食事のように思いますが、例えばn-3系不飽和脂肪酸サプリメントを積極的に摂取するか、魚類を中心とした食事を考慮するかについては、患者さん(お客さん)の生活環境に応じて、個別の対応が望まれます。

 今回のケースでは、糖尿病などの合併症もないとのことでした。野菜不足など、食習慣の偏りがうかがえましたが、明日の予定を控え、今すぐにでも症状を緩和したいというお客さんの希望に沿い、トリアムシノロンアセトニド含有製剤で様子を見てもらうのがよいように思います。

 薬ビンのアイコン素材.png

【参考文献/脚注】
1) J Oral Pathol Med. 1995 Jan;24(1):46-8 PMID: 7722921
2) Arch Immunol Ther Exp (Warsz). 2014 Jun;62(3):205-15. PMID: 24217985
3) J Clin Exp Dent. 2014 Apr 1;6(2):e168-74. PMID: 24790718
4) Oral Surg Oral Med Oral Pathol. 1980 May;49(5):409-12. PMID: 6929465
5) Community Dent Oral Epidemiol. 1988 Feb;16(1):58-60. PMID: 3422621
6) J Clin Aesthet Dermatol. 2017 Mar;10(3):26-36PMID: 28360966
7) Dent Clin North Am. 2014 Apr;58(2):281-97. PMID: 24655523
8) Clinics (Sao Paulo). 2009;64(7):645-8. PMID: 19606240
9) Evid Based Complement Alternat Med. 2018 Feb 27;2018:2907812. PMID: 29681971
10) J Int Oral Health. 2015 May;7(5):74-80. PMID: 26028911
11) Niger Med J. 2012 Jan-Mar; 53(1): 9–11. PMID: 23271837
12) Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod. 2001 Jan;91(1):45-9. PMID: 11174570
13) J Oral Pathol Med. 2010 May;39(5):420-3. PMID: 20141576
14) J Oral Pathol Med. 1991 Sep;20(8):389-91. PMID: 1941656
15) J Formos Med Assoc. 2019 Mar;118(3):664-670. PMID: 30348492
16) Lancet. 1968 Mar 16;1(7542):565-7. PMID: 4170275
17) Acta Otorrinolaringol Esp. 2008 Jun-Jul;59(6):298-307. PMID: 18588791
18) Am J Med. 2012 Mar;125(3):292-301. PMID: 22340928
19) J Am Board Fam Med. 2009 Jan-Feb;22(1):9-16. PMID: 19124628
20) Acta Paediatr. 2010 Mar;99(3):442-5. PMID: 20003102
21) J Am Dent Assoc. 2012 Apr;143(4):370-6. PMID: 22467697
22) Cochrane Database Syst Rev. 2012 Sep 12;(9):CD005411. PMID: 22972085
23) Drug Des Devel Ther. 2015 Dec 31;10:107-15PMID: 26770058
24) Cochrane Database Syst Rev. 2008 Oct 8;(4):CD006701. PMID: 18843727
25) Dent Res J (Isfahan). 2012 Jul;9(4):381-5. PMID: 23162576
26) Clin Oral Investig. 2007 Jun;11(2):143-7. PMID: 17285269
27) Chin J Dent Res. 2016;19(3):159-64. PMID: 27622219

薬剤師、登録販売者のためのOTC連載です。OTC医薬品に対する考え方、使い方について「実践的」に整理します。筆者のドラックストアでのバイト経験と、具体的な薬剤エビデンスに基づき、実際の患者にどうアプローチしていけばよいのか、ピットフォールなどを交えて解説していきます。

【プロフィール】
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保険薬局勤務を経て、現在は病院薬剤師。NPO法人AHEADMAP共同代表。
普段は論文を読みながら医師に対して処方提案などを行っていますが、薬剤師によるEBMの実践とその普及に関する活動もしています。

公式ブログ:思想的、疫学的、医療について
Twitter:@syuichiao89

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