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口内炎治療薬~口内炎ができたのですが、どんな薬がイイですか?- 前編

医療法人社団徳仁会中野病院 青島周一

2019年10月25日 17:00

 患者さんに自信を持ってOTCをおすすめしたい!論文情報や患者さん対応など、薬剤師による薬剤師のためのOTC解説です。

薬の無料アイコン9.png今回のお話「口内炎ができたのですが、どんな薬がイイですか?」

  • 口内炎の症状、注意すべきことは?
  • 特に注意が必要な口内炎
  • アフタ性口内炎の有病割合
  • 特に注意が必要な口内炎
  • 市販で購入できる主な口内炎治療薬
  • 結局のところどうしますか?

薬の無料アイコン9.png今回出てくるOTCは・・・

アフタッチA(佐藤製薬)/口内炎パッチ大正クイックケア(大正新薬)/トラフルダイレクト(第一三共ヘルスケア)アフタガード(佐藤製薬)/口内炎軟膏大正クイックケア(大正製薬)/トラフル軟膏PROクイック(第一三共ヘルスケア)/口内炎パッチ大正(大正製薬)/サトウ口内軟膏(佐藤製薬)/トラフル軟膏(第一三共ヘルスケア)/新デスパコーワ(興和)/口内炎軟膏大正A(大正製薬)/トラフル錠(第一三共ヘルスケア)


 トースターの設定を間違え、朝から食パンを焦がしてしてしまった薬剤師のあなた。カチカチになってしまった堅いパンを取りあえずガブリっ。

「痛っ!!」

 舌を思いっ切りかんでしまいました。あまりの痛さに朝食は諦め、そのままドラッグストアに出勤です。
出勤早々、口腔内に塗布できそうな薬はないものか、売り場の陳列棚を物色していたところ、40歳代くらいの女性が声をかけてきました。

「口内炎ができてしまったんです。このところ野菜不足だったからでしょうか。明日、お友達と焼肉に行くんですけど、おいしく食べたいじゃないですか。口内炎を早く治したいのでよく効く薬が欲しいのですけど……どれがよいかしら?」

「ほ、ほうですね~……」

 野菜不足の上に焼肉……。何か違和感を持ちつつも、口の中の痛みをこらえながら、口内炎治療薬が並ぶ棚を見詰めます。 

 ――ややっ、意外に種類が多い。

薬の無料アイコン9 (1).png口内炎の症状、注意すべきことは?

 口内炎は口の中や周辺の粘膜に生じる炎症の総称です。一般的に口内炎という場合、アフタ性口内炎を指すことが多いですが、口腔内の衛生環境悪化や外傷で発症するカタル性口内炎、感染症に伴う口内炎、薬の副作用による口内炎など、多様な病態を含みます。中には重篤な疾患に付随して発症する口内炎もあり、以下の症状が認められるケースでは注意が必要です。

特に注意が必要な口内炎

  • ① 発熱や皮膚水疱の有無〔スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、中毒性表皮壊死症(TEN)の可能性:薬剤服用歴を確認〕
  • ② 眼痛、充血など眼の炎症症状の有無(ベーチェット病の可能性)
  • ③ 糖尿病の現病歴、免疫抑制薬の服用歴、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染(感染症に伴う口内炎)
  • ④ 慢性的な下痢症状の有無(炎症性腸疾患、セリアック病)

 非ステロイド抗炎症薬(NSAID)の服用でも口内炎を発症する可能性があります1)が、特に注意したいのが抗てんかん薬や抗菌薬などによるSJS、あるいはTENです。高熱や皮膚症状があり、薬剤服用歴からSJS、TENが疑われるようであれば、速やかに適切な医療機関の受診を促します。

 当然ながら、ベーチェット病や炎症性腸疾患に伴う口内炎は、原疾患の治療が優先されます。また、罹病期間の長い糖尿病患者や、自己免疫疾患患者で免疫抑制剤を服用中の患者では易感染状態にあり、感染症に伴う口内炎の可能性を考慮します。状況に応じて、医療機関の受診を勧めましょう。がん化学療法や放射線治療でも口内炎を発症することがあります。このような患者さんがドラッグストアで相談をされる機会は少ないと思いますが、念頭に置く必要があります。

 入れ歯や矯正器具の接触、頬の内側をかんでしまったことによる外傷で発症するカタル性口内炎では、症状の程度や状況に応じて歯科受診などの対応が必要な場合もあるでしょう。ヘルペスウイルスやクラミジアなど、感染症に伴う口内炎では、基本的には感染症に対する治療が優先されますので、市販薬のみでの対応は避けるべきです。また、店頭では聴取しにくい情報ではありますが、性的接触に伴う感染症(梅毒、淋病)でも感染性の口内炎を発症しうることに注意が必要です。今回は、プライマリケアのセッティングにおいて有病頻度が高く、市販薬でも対応が可能なアフタ性口内炎(小アフタ型)を中心に、その対応方法をまとめていきます。

薬の無料アイコン9 (1).pngアフタ性口内炎の有病割合

「アフタ」とは粘膜に生じる3~10mmほどの円形あるいは楕円形をした境界明瞭な粘膜疹のことです。アフタ性口内炎の有病割合は、5~25%といわれていますが、研究デザインや調査手法によって差異がみられます2)【表1】にアフタ性口内炎の有病割合に関する研究結果をまとめます。

【表1】アフタ性口内炎の有病割合

24324_tab1.jpg

(引用文献2より筆者作成)

 アフタ性口内炎の有病割合は、集団背景によっても異なります2,3)。例えば、小児における有病割合は39.2%と高く、両親にアフタ性口内炎の既往がある小児では54.6%とさらに高くなります4)。また、経済的に裕福な環境にある小児では、そうでない小児と比べて有病割合が高いことが報告されています5)(ただし口唇ヘルペスは経済的に裕福でない小児に多いです)。

薬の無料アイコン9 (1).pngアフタ性口内炎の臨床的特徴

 アフタ性口内炎は臨床的に、小アフタ型大アフタ型疱疹状潰瘍型の3つに分類されます。小アフタ型はアフタ性口内炎の7~8割、大アフタ型、疱疹状潰瘍型はそれぞれ1割程度です 6)。主な特徴を【表2】にまとめます。

【表2】アフタ性口内炎の臨床的分類とその特徴6, 7)

OTC口内炎図2.pngのサムネイル画像

(参考文献6、7より筆者作成)

 小アフタ型はアフタ性口内炎の最も一般的な形態であり、潰瘍の直径は10mm未満で【表2】、通常は4〜5 mm程度です。軽度の口内炎では、瘢痕は残らず、多くの場合4〜14日以内に治癒します。OTCで対応可能なアフタ性口内炎は基本的に小アフタ型と考えてよいでしょう。

 大アフタ型は、激しい疼痛を伴い、時に嚥下障害をもたらすこともあります。HIV感染者に発症することが多く、原疾患の精査が必要になるケースもあります。疱疹状潰瘍型では、潰瘍そのものは小さいですが、多数の潰瘍が同時に発生します。時に複数の潰瘍が合体し、激しい疼痛によって会話が困難になることもあります。

薬の無料アイコン9 (1).png特に注意が必要な口内炎

 アフタ性口内炎の原因として、食事、栄養、心理的ストレス、喫煙、家族歴などが知られています3,6~10)。しかしながら、研究手法上の限界や調査結果の一貫性に乏しい側面もあり、現時点でアフタ性口内炎の根本的な原因はよく分かっていません。

 食事内容では、アフタ性口内炎患者はそうでない人と比較して、オレンジやレモンなど酸性度の高い食品を多く食べる傾向にあることが報告されていますが、疾患発生と因果関係があるのかについては不明です11)。ただ、アフタ性口内炎患者では、鉄やカルシウムのなどの微量元素、ビタミンB1、B2、B6、 B12、Cなどの栄養素が欠乏傾向にあると報告されており12~14)、栄養状態とアフタ性口内炎の発症になんらかの関連性が示唆されます。また、生活習慣としては、就寝時刻が遅いことがリスクファクターとして報告されています9

 なお、アフタ性口内炎を有する患者では、そうでない患者と比較して、頭痛や片頭痛、甲状腺機能低下症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、肝疾患、消化性潰瘍、精神疾患の有病者が多いという報告があります15)。これらの疾患がアフタ性口内炎をもたらしているのか、これらの疾患を有する人でアフタ性口内炎を発症する人が多いのかは分かりませんが、原疾患の治療が適切になされているかどうかも含め、病歴はできる限り丁寧に確認していく必要があるでしょう。その上で、食事内容に偏りがないかどうか、規則的な生活ができているかどうか、喫煙状況、心理的ストレスの有無などを確認するとよいかもしれません。患者情報の聴取によって、薬物治療だけでなく、修正可能なリスクファクターに関する情報提供も可能となります。

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