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薬学生を守り育てる強い意志と温かさ

第52回日本薬剤師会学術大会・印象記

2019年10月30日 12:00

 お久しぶりです!コラム「薬剤師みやQのハッピーな職場って?」を連載していた大阪在住薬剤師、みやQです。このたびの台風19号による被害に見舞われたみなさまにお見舞いを申し上げますとともに、1日も早い復旧を心からお祈りいたします。

 今回は、山口県で開催された第52回日本薬剤師会学術大会への参加までの道のりと、印象に残ったシンポジウムについて報告します。

  • 【第52回日本薬剤師会学術大会】
  • 会期:2019年10月13日(日)〜14日(月・祝)
  • 会場:山口県下関市(下関市民会館、海峡メッセ下関 他)

台風接近!危機管理能力が問われる大会

 参加までの道のり?ーーそう、今回は東日本に台風19号が接近する最中、移動することになった大会で、薬剤師の危機管理能力が問われる大会でもあったのです。

 2019年10月6日(日曜日:大会7日前)ーー台風発生の情報を得ました。ここで私は、台風接近に伴いキャンセルした場合の費用を計算しています。思ったよりも金額が安いので安心しました(だいたい、職場や自宅へのお土産の代金と同じくらいでした)。

 2019年10月10日(木曜日:大会3日前)ーー台風が接近し、出発予定日である10月12日(土曜日:大会前日)は新幹線が動かない可能性があるとJRから発表されたため、往路の切符を買い直し。10月12日以降宿泊予定のホテルに11日の宿泊を予約。

 2019年10月11日(金曜日:大会2日前)ーー業務終了後、新大阪駅で博多行き最終であるひかりの自由席に乗車。なんと、座席が確保できました。のぞみに乗車していた場合は、座れるどころか指定席のデッキであった可能性が高かったため、幸運でした。ただし、こちらの列車はのぞみが遅れていた上に、のぞみが通過する駅に降りる予定の乗客を拾っていく役割を果たしていたため、到着が30分以上遅れることに。

 このように、私は「前倒しで参加する」ことを選択できたのですが、業務の関係でそれが無理な方もいます。中には10月13日大会当日の朝、出発する方もいました。また、自宅付近の交通の便が絶たれて、参加を断念せざるを得なかった方もたくさんいます。

 「参加者:参加を断念あるいは前倒しして参加する」「大会主催者側:大会を実行する、あるいは大会自体を中止し、現地での救援活動の準備をする」など、今回の学術大会開催までには、それぞれの立場でさまざまな選択肢がありました。そのいずれが正解であったのか、私には分かりません。しかし、それぞれの人が、それぞれの立場で判断し行動する。危機管理能力が問われる大会だったと私は思います。

薬学生を育てようーー会場に集まった皆が作る温かい空間

 薬歴記載問題など、昨今の薬局薬剤師に対し風当たりが強いものとなっています。また、薬剤師以外の者による調剤業務の一部解禁や、対物業務から対人業務への転換など、薬剤師を取り巻く環境は変化しようと(させられようと)しています。さらに、薬局薬剤師・病院薬剤師、チェーン薬局・個人薬局と、同じ職種なのに対立を煽られています。本来向かうべきところに意識を向かわせないように仕組まれているのではないかと思うこともあります。そういう状況で、私の気分は少し沈んでいました。

 しかし、今回の大会では、まさにこの大会でしか作り出せない「温かい空間」がありました。それが「薬学生シンポジウム『薬剤師』を考えよう」でした。

 会場に足を運んだ参加者の多くは、山陽小野田市立山口東京理科大学薬学部のみなさんでした。山口県が待ち望んでできた薬学部です。2018年4月に開設し、まだ2年生までしかいません。入試方式について調べたところ、地元枠での推薦入試があるなど、地元の学生を地元で薬剤師にしたいという大学の意気込みが伝わってきました。

 学生が考える薬剤師像、既に薬剤師として働いている大人たちの薬剤師像、それらを通して、学生が薬剤師として自らの道を選ぶきっかけになるようにとの願いを込めて開かれたシンポジウムでした。毎回、薬学生による企画は行われているのですが、薬学生の組織といった、意識の高い層が参加するものが多く、今回のように1つの大学に焦点を当てたものはなかったです。

 登壇者は5名ーー薬局薬剤師、病院薬剤師、麻薬取締官、薬学生2名。それぞれの職場でどのように働いているのかを話されました。2名の薬学生は山口東京理科大学の2年生です。1人は「薬学部を選んだ背景、受験し合格するまでに体験したこと」、もう1人は「自分が感じている薬剤師の現状とそれをどう改善していくか」について、それぞれ自分の言葉で話しました。まっすぐでエネルギッシュだけれど、全く背伸びをしていない憎めないキャラクターが印象に残りました。

 フロアからは、薬学生からの質問が多く飛び交いました。薬学生が社会人に質問できる大きなチャンスだったので、仕事の内容、仕事をする上で大事なこと、仕事の楽しさについてなど、薬学生が知りたい質問を投げかけるよい機会となりました。また、座長が会場内にいた行政で働く薬剤師に「薬学生に対し、学生のうちにがんばってほしいことを教えてほしい」と質問を振るなど、会場全体がその場にいる薬学生を育てようという雰囲気に溢れていました。

 昨今、学会発表をネット上で公開しようという意見もありますが、クローズドの場でなければ登壇できない方もいます。例えば今回のシンポジウムでは、秘匿性の高い立場ながらも登壇した麻薬取締官の方が当てはまります(職務上、抄録にも氏名が記載されていません)。広く拡散することができる情報と、足を運ばねば聞けない情報など、情報共有の在り方や選択肢には、それぞれ適した在り方を心得ておく必要があるのかもしれません。

 どこか殺伐とした学術大会でしたが、この空間だけはほっこりしていて、大きな収穫でした。

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