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薬剤師が押さえておきたい健康トピックス(2019年11 月)

Fizz-DI 児島悠史

2019年12月05日 10:00

 2019年11月1日~30日に各メディアで配信された健康情報のうち、「コレは押さえておきたい!」と考えたものを、独断と偏見でリストアップします。患者さんからの突然の質問に困らないよう、情報収集の一手として役立てていただけると幸いです。

「ガンは真菌だ!」誌面広告が物議 朝日新聞社広報「十分な検討を行うべきでした」

https://www.j-cast.com/2019/11/14372661.html?p=all

【J-Castニュース 11月14日】

 11月12日の朝日新聞朝刊に、「ガンの新しい治療法」という書籍の広告が大きく掲載されました。しかし、この書籍でとりあげられている治療の発見者は、過去に患者を根拠のない治療法で死なせたために医師免許をはく奪され、過失致死罪で実刑判決も受けてたとの報道もありました。こうした科学的根拠のない治療に関する広告が大々的に新聞紙に掲載されたことで、多くの医療関係者から批難の声があがりました。書店でも「健康」のコーナーには根拠のない危険な治療法を勧める書籍が所狭しと並んでいます。こうした書籍を「お見舞いの品」として患者に贈ってしまうことは、非常に大きな問題です。


(参考)

◆朝日新聞:朝刊に掲載した書籍広告につきまして(11月14日)
https://www.asahi.com/shimbun/release/2019/20191114.pdf

身につける端末、病気の兆候つかむ オムロンが血圧計

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52546450T21C19A1EA5000/

【日本経済新聞 11月23日】

 腕時計などのウエアラブル機器を病気の早期発見や発作予知に活用しようという動きは、世界的に広がっています。特に、Apple Watchが心房細動を比較的高い頻度で検出できるとする研究1)も論文として報告され、大きな話題になりました(日本では法律上の問題から非搭載)。しかし、「早期発見」が、どんな病気でも常に有益とは限りません。治療法が確立していない病気や、発見の時期と予後に関連性がない病気では、過剰な早期発見が病気の不安を煽るだけになってしまうこともある、という点には注意が必要です。


1)N Engl J Med.381(20):1909-17,(2019) PMID:31722151
Apple watchの脈拍監視アルゴリズムで、419,279人の参加者から2,161人にリスクを検出、そのうち153人(34.0%)は心電図で実際に心房細動が見つかったという報告。

そのサプリメント吸収されてません 商品テストで4割が時間内に溶けず

https://mainichi.jp/articles/20191123/k00/00m/040/251000c.amp

【毎日新聞 11月23日】

 国民生活センターの調査の商品テストで、対象となったサプリメントの4割以上が医薬品で定められた規程時間内に溶出せず、体内で吸収されていない可能性が指摘されました。医薬品と違い、サプリメントや健康食品では崩壊試験や溶出試験などが義務付けられていないため、実際に服用した際の薬物動態が不明な商品も多いのが実情です。今後は、より安心して使用できる商品の開発、そのデータの公開などが求められると思います。

高齢者の交通事故増と100万人に処方される「疼痛薬」の相関関係

https://friday.kodansha.co.jp/article/74355

【フライデーデジタル 11月4日】

 高齢者の交通事故が増えたという事実と、神経障害性疼痛の治療薬『リリカ(一般名:プレガバリン)』の処方量が増加しているという事実は、確かに存在します。しかし、だからといって『リリカ』の処方が「交通事故を増加させた」という根拠はありません。こうした、データ上の「相関関係」を「因果関係」と安易に結び付けてしまう考え方は、様々なところで起こっており、多くの場合では間違った行動の原因になります。薬の使い過ぎは確かに問題ですが、極端な主張に惑わされて必要な薬を飲まなくなってしまう人が出ないよう、情報の扱いには十分な注意が必要です。


(参考)

◆有名な「疑似相関」の例

①地球温暖化が進むと、海賊の数が減る(海賊が温暖化の原因であった)
https://www.forbes.com/sites/erikaandersen/2012/03/23/true-fact-the-lack-of-pirates-is-causing-global-warming/#30d57e553a67

②ニコラス・ケイジの年間映画出演本数と、プールでの溺死者数は相関する
http://tylervigen.com/spurious-correlations

【コラムコンセプト】
TV・新聞・週刊誌・インターネット......毎日さまざまなメディアから大量の健康情報が配信されます。それを見た患者さんが「こんな情報を見たけれど、私の治療って大丈夫?」と聞いてきたらどうしますか?医療や薬に関する情報は、命に関わるもの。正確さ、専門性が求められます。薬剤師は薬の専門家として、患者さんの持ち込んだ情報が適切かどうかを判断し、対応しなければなりません。このコラムでは毎月、世間を賑わした健康情報をリストアップし、必要に応じて解説します。患者さんからの突然の質問に困らないよう、情報収集の一手として役立てて頂ければ幸いです。

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【児島 悠史氏 プロフィール】
京都薬科大学大学院修了後、薬局薬剤師として活動。「誤解や偏見によって生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、日々の服薬指導のほか、Webサイト「お薬Q&A~Fizz Drug Information」を運営。医学論文などを情報源とした信頼性のある医療情報や、国民の情報リテラシー向上を目的とする記事を配信。近著は、「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100」。

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