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大学と薬局ーーいろいろな形の連携

第13回日本薬局学会学術総会・印象記

2019年12月09日 12:00

 こんにちは!みやQです。先日、神戸市で開催された第13回日本薬局学会学術総会に参加しました。今回のテーマは「薬局の可能性を極める新たな時代へ〜現場と教育の融合」。薬局薬剤師である私にとって、大学とは薬学生実務実習でかかわることが多いのですが、それ以外にどんな形で大学と薬局が連携するのでしょう?

  • 【第13回日本薬局学会学術総会】
  • 会期:2019年10月19日(土)〜20日(日)
  • 会場:兵庫県神戸市(神戸国際会議場・神戸国際展示場 他)

大学で学んだ知識の活用法・自己学習の方法を提案

 今回の学術総会では、次のような発表や企画が行われました。

1. 大学の指導を受けて研究成果をまとめる

2. 大学で行われている教育を卒業生向けに指導、講演する

3. 大学で学んだ知識を活かす方法を提案する

1. については、日本薬剤師会学術大会や日本医療薬学会年会でも、大学の協力を得て研究方法を組み立てたり、データを解析したり、倫理審査を行うなどした口頭発表やポスターが見られました。この流れはこの数年で一気に進んでいます。

2. については、以前から大学主催の生涯教育セミナーなどが各地で行われていますが、今回の学術総会では「コミュニケーション」をテーマとするセミナーが多かったように感じました。

 今回紹介するのは「3.大学で学んだ知識を活かす方法を提案する」です。このテーマで開催されたプログラムが「大学との連携プログラム2 薬剤師が薬剤の適正使用を推進するにはどうすればいいか? 薬剤に関する知識の活用法と自己学習の方法を“薬学アベンジャーズ”が提案します」でした。

 6年制のカリキュラムになってからは現場で利用することを意識した教育がなされるようになりました。4年制のころはそれぞれの教員が自身の研究分野の講義を行って終わりといった印象があり、現場に入ったときに知識の使い方に四苦八苦した経験があります。

 このプログラムでは、PharmaTribuneをはじめとしたメディアでも活躍する有名な薬剤師・薬学研究者が登場し、大学で学んだことをどう活かすかについて解説しました。

 登壇したのは次の皆さんです(敬称略)。それぞれの演者が自身の専門分野の切り口から解説・提案しました。講演の概略を紹介します。

司会:天野 学(兵庫医療大学薬学部 医療薬学科 教授)

演者:

清水 忠(兵庫医療大学薬学部 医療薬学科)→化学構造式の視点から、構造式が薬物の効果にどのように影響するかを解説。

山本雄一郎(阪神調剤ホールディンググループ有限会社アップル薬局 代表取締役/熊本大学薬学部 臨床教授)→薬剤学・薬物動態学、化学構造式などさまざまな視点からどの資料を用いて考え、服薬指導および薬歴にしていくか。最終的なアウトプットの方法、実際の業務に反映させる具体的な方法を提案。

藤野秀樹(兵庫医科大学薬学部 医療薬学科 准教授)→薬物動態が薬の効果、副作用にどのように影響するのか。また、患者の状態に応じて薬物の体内での動きがどう変化するのか。パラメーターの動きが薬物の体内での働きにどのように反映されるのか。薬物動態学を実務につなげる方法を提案。

青島周一(医療法人社団徳仁会中野病院)→臨床論文の読み方、評価のしかた。「正しいとはなにか?」という価値判断も含めて。論文を読んでどう評価するか、最終的に患者さん個人に適応させる場合に重視すべき事柄は何か(哲学的な講演でした)。なお、講演内容はnote(有料記事)で公開されています。

児島悠史(ひより薬局/Fizz-DI)→現場での臨床疑問を根拠のある資料を用いて解決する方法。臨床疑問について、添付文書以外の各種資料を用いて根拠を持った回答に仕上げていく方法を提案。

 ネットを利用して講演中に会場から質問を受け付けるなど、活発な議論になるような仕掛けがなされていました。質問内容はこちら。ちなみに「現場で働いている方に質問します。いつ論文を読んだり思考をまとめたりしますか? 家事やゲーム、眠気に追われて時間が取れません」という質問に対し、青島先生は「呼吸をするように論文を読んでいる」とのことでした。

 非常に有意義な時間を過ごすことができました。ただ、もったいなかったのは、同プログラムの開催が土曜日の昼間であったこと。開局時間帯であったり、閉局していても会場まで間に合うように足を運べない薬剤師が多かったものと思われます。

即戦力を目指す実学にとどまらない、さまざまな知に触れる機会も大切では

 今回の総会で感じたことは「薬学部のカリキュラムは現場偏重になりすぎてはいないか」でした。

 現場を意識した大学教育がなされるようになった今、ベテラン薬剤師が若手に教えることができるのは経験で身につけた「人との接し方」ぐらいしかないのではないか? むしろ若者に笑われるのではないか?と震える4年制卒薬剤師である私がいました。先人によって現場での知識が積み上げられ、学生に教えられる形にまで体系化されたという証拠でもありますが。

 でも、そんなに即戦力としての知識を教える必要があるのか?とも疑問に思う面があります。医療の現場は進歩が早いです。大学で学んだ知識も卒業することには古びてしまって現場で用いないものもあります。教養科目をしっかりと身につけたり、他学部の授業も受けるなど、もう少し自由で幅広い好奇心を満たせるカリキュラムであってもよいのではないかと思いました。患者さんの生活や価値観は実に多様です。そうした多様な価値観を理解する上で、実学にとどまらないさまざまな知に触れる機会も大切だと思うのです。

 大学時代の同級生が教授と薬局薬剤師という立場で連携している姿を確認したのですが、人が多すぎて声をかけられませんでした。それが非常に残念だったということを締めにしたいと思います。

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