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薬局も病院も、小規模はつらいよーー学会参加・認定と業務・家庭との両立

第29回日本医療薬学会年会・印象記

2019年12月11日 08:00

 こんにちは!みやQです。今回は、福岡市で開催された第29回日本医療薬学会年会に参加して印象に残った話題について報告します。

  • 【第29回日本医療薬学会年会】
  • 会期:2019年11月2日(土)〜4日(月・祝)
  • 会場:福岡県福岡市(福岡国際会議場 他)

医療薬学会初の薬局薬剤師向け専門薬剤師制度「地域薬学ケア専門薬剤師」

 同学会において「地域薬学ケア専門薬剤師」「医療薬学専門薬剤師」の制度が発表されました。前者は薬局薬剤師、後者は薬学系教員を対象としています。これに伴い、薬物療法専門薬剤師とがん専門薬剤師の制度も改正される予定です。

 「地域薬学ケア専門薬剤師」は、薬局薬剤師を対象にした日本医療薬学会初めての専門薬剤師制度。自分の能力が認められるチャンスだ!と目を輝かせる薬局薬剤師もいるかもしれません。しかし、そのハードルは非常に高いのではないかと思います。

地域薬学ケア専門薬剤師の要件(2020〜24年までの過渡的措置):

  • 1. 日本薬剤師研修センター・研修認定薬剤師、日本病院薬学会、日本病院薬剤師会・日病薬病院薬学認定薬剤師、日本薬剤師会・生涯学習支援システム(JPALS)・クリニカルラダー5以上のいずれかを有していること
  • 2. 実務歴が5年以上
  • 3. 申請時に日本医療薬学会会員であること
  • 4. 学会発表(筆頭)が1回以上、もしくは論文(筆頭)が1報以上あること
  • 5. 学会等参加・発表単位を20単位以上取得していること

 1〜5の条件をすべてクリアして、本学会委員会の選考を経て、理事会で承認された者が専門薬剤師として認定されます。ただし、この暫定的措置は2020〜24年の申請者まで。暫定的措置で認定された人は次の更新(認定期間は5年)までに5年間の研修を含めた要件を満たさねばなりません。つまり、申請即基幹施設での研修開始というスケジュールです。この5年間の継続した研修としては、薬局で勤務しながら週1回、基幹施設でのカンファレンスを実施とされています。暫定措置を講じる5年間に認定者と研修施設を増やす狙いがあるようです。申請者に対して研修施設の紹介はあるのでしょうか。仮にマッチングがあるにせよ、研修施設の受け入れ定員を超えた場合、申請しても更新できないことになってしまわないか疑問が残ります。

 学会発表または論文(いずれも筆頭)は、薬局で働きながらでも可能ですが、ある程度交通の便がよく大規模な薬局や病院に勤務している薬剤師でなければ、5年間定期的に研修施設に赴くのは難しいのではないでしょうか。

 大手の薬局ではその資格を保有してほしい薬剤師を選抜すると推測されます。そうした企業の場合、配属によって資格を取得できる/できないが決まり、意欲があっても資格を取れない薬剤師が出て不満にならないのかという心配があります。また、施設内に複数の認定者がいる場合、研修を順繰りで回せるシフトづくりも難しくなると考えられます。

 そのような不満が生じず、一定の機会均等が保たれる方策としては、生活への影響を軽減し、業務時間を削らずに取得できる中級クラスの認定があってもよいと私は考えます。患者さんにとって近くの薬剤師の能力・得意分野が分かるほうが全体の底上げにつながりますし、遠くの名人にわざわざかからなくてもよくなります。そのあたり、一考の余地があるのではないでしょうか。

そもそも、学会参加へのハードルが高すぎる

 今回の同学会年会は、日程的な理由でもハードルが高い印象を受けました。土曜日(11月2日)の朝からみっちりと演題が入っており、全日程参加できる人は相当限られるのではないでしょうか。そのため、土曜日にセッションの参加者は男性が多い印象を受けました。

 病院にしても薬局にしても土曜日に業務のある人は多いです。大規模な施設であれば人員をやりくりして参加者を送り込むことができます。しかし、日本の病院の8割が200床以下、6割以上が100床以下であり、勤務する薬剤師数は1施設当たり1〜3人と言われています。そのような中、入院患者の薬剤を調剤しながら、病棟活動すらままならない状況で学会に参加するのはかなり難しいのではないでしょうか。

 学会への参加はえてして特定機能病院のような配置基準が異なる大規模病院であるほど容易で、学会発表を行うことでさらに高レベルの医療が可能となるといった印象です。一方、小規模病院や薬局に勤務する薬剤師の学会参加は、個人のポテンシャルに依存しているのが現状ではないでしょうか(こう書いてしまうと、ほぼ全日程参加した私のポテンシャルが高いかのようですが、能力的には普通の薬剤師です)。

 専門薬剤師制度の認定要件や学会への参加は、1施設当たりの薬剤師数が少ない小規模病院や薬局にとってハードルが高いと言わざるをえません。それに加えて、家事や育児、介護といった事情までもが加わりがちな女性薬剤師にとっては、さらなる高い壁が立ちはだかっているのが現状です。

小規模病院や男女共同参画/働き方改革に関するセッションも

 不利な環境下にある薬剤師には目を向けていないのかと思ったのですが、小規模病院や男女共同参画/働き方改革に関するシンポジウムも設けられていました。

小規模病院における薬剤業務の再構築(シンポジウム37)

 重症心身障害児/者に特化した病院で個別化医療を実践しながら研究を行う薬剤師、地域に出て住民に対し働きかける薬剤師など、高いポテンシャルを発揮する病院薬剤師の事例紹介を通して薬剤業務を捉え直すというシンポジウムでした。その中で「田舎の薬剤師 地域医療への貢献を模索中!〜故郷を薬剤師として支えたい〜」を連載していた野田学先生も紹介されていました。

 小規模病院の薬剤師は一人で何役も果たすことになります。薬に関する業務を一手にこなし、院内・院外の関係者間の調整も行います。中には、融資について銀行職員とかけあったことのある病院薬剤師もいらっしゃいました。そうなると、病棟業務には手が回らないことも多いようです。

 しかし、小規模病院にもよい面があります。ポテンシャルが高く、自発的に動ける人にとっては、障壁となるものが少ないので自由に活動しやすいという特徴もあります。

薬剤師・医療薬学分野における男女共同参画および働き方改革を考える(シンポジウム65)

 学会参加者は男性が多いのですが、薬剤師として従事している人の7割近くは女性です。結婚、出産、育児、自らや家族の病気、介護...さまざまなライフイベントと仕事のバランスを再構築する必然性が増大しており、働き続けるための選択肢を増やさないといけません。特に、これから生産年齢人口が激減するのですから(老齢人口は国全体としては横ばいです)。

 時短勤務や育児休業などは企業でも取り入れられていますが、薬剤師の場合は知識のアップデートも必要です。そのための取り組みとして、昼休みに勉強会を開催し、時短勤務者の参加を促すという事例が紹介されていました。

 また、大学側から男女共同参画についての発表もありました。まずは男女共同参画の数値目標を達成するという趣旨のアプローチもありました。

 男性からの発表もありました。「お互いさま」という仕組みで男女問わずライフイベントに応じた勤務体系を構築したとのこと。その上で、県病院薬剤師会でも各階層に対し、学術研修をはじめ、ワークライフバランスに関する研修、マネジメント研修など、多様な研修に取り組んでいるそうです。

 しかし、これらの発表に私は違和感を覚えました。あくまで「ライフイベントをこなしながらバリバリ働く」仕事重視の取り組みが多かったからです。仕事はそこそこで家庭を重視して働くという考え方は尊重されないのでしょうか。どこかの学会でもセミナーでもよいので、家庭を大事にするため業務をコンパクト化した事例紹介や、どちらもぼちぼちやりましたといった企画も出してほしいです!

 学会に参加する人自身は、業務を改善したい、もっと学びたいという志向が強いのですが、参加者を会場まで送り届けるため、当日までの業務のやりくりは職場全体で行っています。中には、個人的な生活環境による事情で学会に足を運べない人、参加を希望しながらも選に漏れた人、後進に道を譲った人など、多くの職場の人々の協力があります。そうした人々にとっても実りのある学会になるとよいのではないでしょうか。

 先の日本薬学会学術大会(台風接近に伴い結果として3泊4日)や今回の日本医療薬学会年会(2泊3日)のような連泊を伴う学会に参加する上で、非常に心強かったのは、身の回りのことを自分でできる家族の存在です。学会を終えて帰宅したときには洗濯物が全く溜まっていませんでした。

 学会に参加して学びを深めるーーその背景にある、職場の人々や家族による支援にも目を向けたいものです。

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