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薬剤師が押さえておきたい健康トピックス(2019年12 月)

Fizz-DI 児島悠史

2020年01月07日 10:00

 2019年12月1日~31日に各メディアで配信された健康情報のうち、「コレは押さえておきたい!」と考えたものを、独断と偏見でリストアップします。患者さんからの突然の質問に困らないよう、情報収集の一手として役立てていただけると幸いです。

100人に1人が死亡!痛風薬「フェブリク」の恐ろしすぎる副作用

https://friday.kodansha.co.jp/article/84711

【フライデー 12月22日】

 高尿酸血症治療に使われる『フェブリク』を服用すると、100人に1人が副作用で死亡するかのような誤解を与える記事が週刊誌に掲載されました。記事の中ではCARES試験などの結果が引用され、さも科学的根拠に基づいた医療情報のように書かれています。しかし、そもそも「高尿酸血症」自体が死亡のリスク因子です。また、CARES試験は高血圧や糖尿病などを合併した患者を対象としており、比較対象もプラセボではありません。当該記事は、こうした背景を無視した不正確な内容になっています。公衆衛生を司るべき薬剤師が、患者の不安を煽るために専門知識を使ったり、論文情報を曲解したりすることは極めて不適切で、大きな問題だと感じています。


(参考)

◆CARES試験
N Engl J Med. 2018 Mar 29;378(13):1200-1210.
「フェブキソスタット」と「アロプリノール」の効果を比較した試験。この試験に参加した患者は様々な基礎疾患があり[高血圧(92.4%)、脂質異常症(86.4%)、細小血管疾患を持つ糖尿病(38.5%)、心筋梗塞の既往(38.6%)、心不全(20.1%)、脳卒中(14.8%)など]、これら自体が死亡リスクである点に注意

◆副作用情報で読者の不安を煽る記事の扱い方
https://ptweb.jp/article/2017/170615002154/

インフル薬服用後転落か、中学生死亡

https://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=595536&comment_sub_id=0&category_id=256

【中国新聞デジタル 12月10日】

 インフルエンザを発症すると、薬の服用の有無に関わらず異常行動を起こす恐れがあります。2017年には厚生労働省が国民、報道関係者向けに注意喚起を行いましたが、未だにテレビやラジオを通じて「薬を飲んだから異常行動を起こした」という間違った印象を与える報道がなされることがあります。こうした情報は「薬を飲んでいなければ安心」という油断に繋がるため、非常に危険です。異常行動による悲劇をくり返さないためには、「玄関や全ての部屋の窓の施錠を確実に行う」「ベランダに面していない部屋や窓に格子のある部屋で寝かせる」「できる限り1階で寝かせる」といった具体的な対策の周知徹底が大切です。


(参考)

◆シオノギ製薬「インフルエンザへの理解を深め、正しい知識や予防法を身につけましょう」
http://www.shionogi.co.jp/wellness/diseases/influenza.html

はとバスが死亡事故 運転手はインフルエンザに感染

https://www.asahi.com/articles/ASMD54HCVMD5UTIL019.html

【朝日新聞デジタル 12月5日】

 この事故の報道を受け、インフルエンザの時は仕事を休むべきだという意見が散見されましたが、その背景には「インフルエンザなら仕方ないが、かぜなら働ける」という考えがあるように感じました。日本では、「かぜでもかぜ薬を飲んで仕事をする」ことが常識であるかのように思わせるテレビCMが連日放映されています。しかし、かぜ薬を飲んだらかぜが早く治るわけではなく、回復に最も重要なのは休養です。そもそもインフルエンザの迅速診断キットの感度は50~60%程度と報告されており、陰性(病気でない)との結果が出ても「インフルエンザではない」とはいえないことにも注意が必要です。


(参考)

◆インフルエンザの迅速診断検査の精度:感度62.3%(子ども66.6%、大人53.9%)、特異度98.2%
Ann Intern Med. 2012 Apr 3;156(7):500-11.
※感度:病気の人を正確に「陽性:病気である」と判定できる割合
※特異度:病気でない人を正確に「陰性」と判定できる割合

小6女児がインフルエンザ脳症で死亡 長野

http://www.news24.jp/articles/2019/12/21/07565951.html

【日テレNEWS24 12月21日】

 インフルエンザは通常の風邪と違って、ときに致命的な合併症を引き起こします。特に「インフルエンザ脳症」はインフルエンザで最も重い合併症の1つで、後遺症が出たり死亡に至ったりすることもあります。インフルエンザ脳症を発症すると、急激に容体が悪化するケースも多く、発症後の治療では重篤化を防げない可能性があります。そのため、インフルエンザそのものをワクチン接種などで予防することが重要です。

 また、「アスピリン」や「ジクロフェナク」など、一部のNSAIDsがインフルエンザ脳症の発症リスクを高める可能性があること、小児だけでなく成人でも少なからず起こっていること1)には注意が必要です。

1) 国立感染症研究所 「インフルエンザ脳症について」 IASR.36:212-3,(2015)

【コラムコンセプト】
TV・新聞・週刊誌・インターネット......毎日さまざまなメディアから大量の健康情報が配信されます。それを見た患者さんが「こんな情報を見たけれど、私の治療って大丈夫?」と聞いてきたらどうしますか?医療や薬に関する情報は、命に関わるもの。正確さ、専門性が求められます。薬剤師は薬の専門家として、患者さんの持ち込んだ情報が適切かどうかを判断し、対応しなければなりません。このコラムでは毎月、世間を賑わした健康情報をリストアップし、必要に応じて解説します。患者さんからの突然の質問に困らないよう、情報収集の一手として役立てて頂ければ幸いです。

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【児島 悠史氏 プロフィール】
京都薬科大学大学院修了後、薬局薬剤師として活動。「誤解や偏見によって生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、日々の服薬指導のほか、Webサイト「お薬Q&A~Fizz Drug Information」を運営。医学論文などを情報源とした信頼性のある医療情報や、国民の情報リテラシー向上を目的とする記事を配信。近著は、「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100」。

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